嗚呼、あの阿婆擦れ。
 またか。


「えー、もう少しお話ししようよ〜」


 気味の悪い声を出すな。
 そんな声、にーには少しも効果なんてないんだから。

 気安くにーにに触んないでよ。
 にーにもにーにだ。
 そんな優しく振り払って。
 だからその馬鹿が勘違いするのに。
「触るな」って怒鳴りつけて、叩き付ける勢いで振り払わないと。
 そいつ、馬鹿だから分からないよ。

 変な所で、女に甘いんだから。
 だからくのたまに、「あいつチョロイ」とか云われちゃうんだ。


 そんなにーにも、僕は好きだからいいけど。
 そのうち、他の人には愛想尽かされちゃうんだからね!

 そうなったらそうなったで、恋敵が消えてくれてありがたいけど。
 にーに、本当は寂しがり屋だから厭でしょ?
 ちゃんと、必要ないものは切り捨てなきゃだめだよ。
 そうしないと、本当に大事なもの、なくしちゃうんだよ。もう。


 それにしても。
 あの阿婆擦れ、ムカツクなぁ。
 この前なんて、にーにに傷の手当てさせてた!

 僕が声を掛けようとした時、狙ったように転んで!
 毒虫(みんな)のお世話が終わったから、畑仕事の手伝いしようと思ってたのに。
 まさかにーにがあんな甘い対応するなんて、思ってなかったから、びっくりしちゃったんだ。
 ジュンコだって驚いてたんだから。


 あんな得体の知れない女に、にーにが優しくするなんて!


 天地がひっくり返るかと思った。
 それくらいびっくりした。
 そのせいで、声をかけ損ねちゃったんだ。

 僕とにーにの時間を邪魔するなんて、酷い女!
 どうしてか、作兵衛たちは「天女様だ」とか「綺麗だ」とか「優しい」とか云って懐いてるけど。
 どこが綺麗なの、あんなの。
 ジュンコやキミコ達の方がよっぽど綺麗じゃないか。
 優しい? どこが?
 ただ甘い事云って、理想を語って、守られる立場に甘んじてるだけじゃないか。
 あんなの、優しいって云わない。
 与えられた物をさも当然と云う顔で受け取って、一つも恩を返さないような女、阿婆擦れって云う
んだよ。
 恩知らずの恥知らずだ。

 男に媚売る事ばっか考えてて、本当にやな女。

「……どうしようか、ジュンコ」

 可愛いジュンコの頭を撫でる。
 チロチロと愛らしい舌で、僕の頬を舐めてくれる。

 ……うん。
 うん、そうだね。
 どうにかして、消せないかなぁ、あの女。
 追い出すでもいいけど、目障りだから正直なところ、あの世へ送り出してやりたい。
 同じ空の下で、同じ空気を吸ってると思うだけで、腹立たしいんだもん。
 あんな阿婆擦れ、地獄の鬼へ押しつけてやるんだ。


 そう、とても、簡単な事。



「狂わなければいけない理由の一つに接触があるならそれを絶てばいい」



 嗚呼でもあの阿婆擦れ、色んな人を誑し込んでるからなぁ。
 ちょっと上手にしないと、バレたら大変かも知れない。

(面倒くさいけど、にーにの為なら少しの苦にもならないよ。後で褒めて貰おう)



 了


 孫兵、落ち着け!←
 しかし、読み返してみても見事な八つ当たり……凄い理不尽……
 だがヤンデレとはそう云う物だと私の中にインプットされているので仕方が無い。←

 だってヤンデレって留守電の時間いっぱいまで怖い伝言入れたり、やばい手紙を無記名で出してお
いて「どうして返事くれないの?!」ってキレたり、一晩中外に無言で立っておいて「何で気付いて
くれないの」とか云ったり、意中の相手が自分以外の人間に惚れたら後ろから刺すようなキャラの事
でしょ?(誤認情報の可能性大)

 だからこれでいいと思ってる。開き直りです。最悪ですね!^^←


 配布元:Abandon