「一度くらい、ちゃんと話し合った方が良いと思うのです……」

 憔悴しきった顔で晴次が云う。
 原因は分かってる。とうとうくの一教室に、花都の事がバレちゃったんだ。

 まぁいつかはばれると思って覚悟はしてたけど、いざ現実になっちゃうと、なぁ。
 ひしひしとした重圧感を感じてるのだと思う。
 だって本当に――晴次の一言で、学園が真っ二つに割れちゃうんだもん。

「やはり、楽な方へ楽な方へ逃げてはいけません。立ち向かってこそ活路が開けるのですよ」
「それはとても立派な決意だけど……」

 拳を握り、悲壮な決意をする晴次に、不覚にも涙が。
 いやだって、確かにさ、逃げ回ってる場合じゃなくなったけど。
 晴次がそこまでしなくちゃいけないってのも……少し理不尽な気がするよ。


 確かに晴次が今回の問題の中心に居るけど、それは問答無用で座らされちゃっただけでさ。
 そもそもの原因――むしろ、元凶と云いたい――は、花都じゃん?
 その花都は今日もあっけらかんと過ごしてて、男に囲まれてちやほやされて、にこにこ笑ってるだ
けでさ。巻き込まれた側の晴次がこんな苦労してるなんて。
 ほんっと、世の中って理不尽。


「人間には言葉があります。言葉にしなくても伝わる事はありますが、根本的には言葉にしなくては
伝わりません。しかしその言葉もまた誤解を産む危険性を孕んでいます」
「人間って難しい生き物だね。あれ、ちょっと哲学っぽーい」
「人間は哲学する生き物です! 宜しいですか、勘右衛門。まずは相手の方の話を聞き、その後に
僕たちの意見を述べ、折衷案を捻り出しましょう!」
「折衷案でいいの?」
「僕たちが彼女の希望通りに別れる事は有り得ませんから。穏便に僕らの事を諦めていただいて、
別の恋に生きていただきましょう。それが良いです、一番良いです。色んな方々に愛されているので
すから、よほど変な選択をしない限り、花都さんも幸せです! 多分!」
「最後の最後で自信なさげだなぁ〜」
「……彼女の幸せを僕が決めつけるのは、おこがましいでしょう?」

 そうしょんぼりした風に云う晴次に、おれは思わず苦笑した。
 あぁ本当に、こいつはどうしようもないなぁ、と思いながら。

 巻き込まれた側なんだ、おれも晴次も。
 あいつが勝手に晴次を好きになって、おれとの仲を「間違ってる」なんて糾弾して騒いで、どうにか
して晴次を物にしたいって考えてる、女の我が侭。
 だからもっと被害者面していいんだ。
 くのたまが駄目なら、晴次を猫可愛がりしてる先輩二人に助けを求めればいいんだし。”イカれ具
合”なら六年生とタメ張れる同級生達だって味方なんだから、泣き付いても構わない。
 そうすればあっと云う間もなく終わっちゃうのに、それをしない。


 晴次は優しいから。


 花都を「困った人」と云いながら、傷付けたり排除するのは心苦しいと思ってて。
 自分たちの問題に他の人たちを巻き込むのは申し訳ないと思って。
 そして、自分たちの幸せのために、花都を犠牲にしたくないと、思ってる。

 甘くて優しくて馬鹿な――おれの伴侶。

 そんな所を愛しく思ってるおれも、相当な馬鹿だけどさ。


「……ま、確かに話し合いは必要かもね」
「勘右衛門……!」
「言葉で納得してもらえれば、それでよし。駄目なら実力行使になるけど」
「いやいや、最後の物騒な部分は待って下さい。一度で諦めないで! 仏様の顔でも最大三回はあ
るのですから!」
「じゃぁ人間は一回でよくない?」
「そう云う意味では無くて!」

 ぎゃいぎゃい騒ぎながら、花都が居るだろう食堂へ向かう。
 膳を受け取る時に、後でちゃんと話し合おうとでも云えばいいかな。
 そうしたらきっと良い方向に勘違いして、快く承諾するだろうし。



 − 俺・私・僕



 さぁ、早くこの不愉快な三つ巴を終わらせよう。

(いらないのはお前だよ。てんにょさま)



 了


 話し合いの場は設けるべきかと……! 思いまして……!
 即効排除はヤンデレの仕事だ!←

 妙なこだわり。
 五年生と云う集団は病気とか病んでるとかじゃなくて、イカレてると美味しい。(ひでぇ)
 個々人はヤンデレでも美味しいと思うんですけど、集団になると病みが飽和状態になってイカレちゃ
えばいいんじゃない? みたいな。(ひでぇ)(二回目)
 イカれた連中が馬鹿騒ぎ!←
 自分で云うのもなんだが私は色々なものから影響を受け過ぎである。


 配布元:Abandon