046.アリエッタ強襲
「アッシュ―――ッッ!」
「げぇ?! アリエッタ?!」
 辞表を出し――直属の上司が全員居ないので、適当な詠師に渡した。絶望に染まりきった凄い
顔をされた――、さぁ聖歌の兄上からの指示を遂行しようと部下と一緒に荷物を背負った所で、部
屋にアリエッタが踏み込んで来た。
 思い切り舌を打つ。アリエッタを送り込んで来やがって、こんな時ばっかり勘が鋭いから髭の野郎
は厭なんだ、と内心毒づいた。
 仕方ない。アリエッタに恨みはないが、適当に気絶でもさせようかと思ったが、其れより早く相手
に動かれた。
 武器も持たずツカツカと近寄って来て、アッシュの腰辺りにしがみついて来る。普段からは想像
も出来ないアリエッタの行動に、アッシュも部下も揃って固まってしまった。
「あ、アリエッタ……? 何だ、おい、どうした?」
「アッシュ……!」
 縋るような声で名を呼ばれ、アッシュはぎしりと硬直した。
 女性特有の甘い香りや、肉の柔らかさを感じ、頭の中が真っ白になる。なんせ『神託の盾』騎士
団に来てからと云うもの、まともに女性と関わった事がないのだ。
 ぱっと見れば十二、三歳に見えるとは云え、アリエッタはもう十六歳。いっぱしの大人だ。
 だと云うのに、易々と男に抱き付くとは! 獣と同じ感覚で男に抱き付いてはいけない!
 アリエッタの将来が猛烈に不安になったアッシュは、現状など忘れ叱りつけようとして、
「ルーク様達と、お知り合いって、本当、ですか……?!」
 出て来た名前に一時停止した。
 何故そこで、アレの名前?
「ま、まぁ一応は……」
 それだけを何とか答えると、アリエッタの手に力がこもった。
「お願い、アッシュ! アリエッタ、ルーク様達に、恩返ししたい、です! 出てくなら、アリエッタも
連れてって!」
 ――それなんて愛の逃避行?!
 少しキャラの違う事を考えながら、アッシュは慌ててアリエッタから目を逸らす。いや待て落ち着
け自分! アリエッタは何らかの理由でアレに恩返しがしたいからついて来たいと云ってるだけで、
俺はつまりおまけ! 利用! ただそれだけ!
(……それも虚しいな)
 途端、冷静になって細いため息を一つ。
 正直に云えば、アリエッタを連れ歩くのは不味い。タルタロス襲撃に直接関わっているのだから、
確実にマルクトから身柄を要求されるはずである。だが、彼女の能力は惜しい。魔物と会話し、使
役、いや、友になれると云う、常人には有り得ない能力。ヴァンもそれを目当てに、彼女を味方に
引き込んだのだから。
 ダアトに置いたままでは、ヴァンにかっさらわれる可能性が高い。あの男は国の力など屁とも思っ
ていない馬鹿だ。その馬鹿のせいでこの少女が、今よりもさらに重い罪を背負わされるのかと思う
と、アッシュは遣る瀬無い気持ちになった。
 彼女もまた、被害者だ。ならば、救いたいと思っても、良いではないか。
(……聖歌の兄上に、またお知恵をお借りしなければな)
 小さく、笑う。するとそれを目敏く見つけたアリエッタが、ぱっと顔を輝かせた。
「分かった。連れて行ってやる。だが、俺の指示には従って貰うぞ」
「はい! はい! アリエッタ、出来るです!」
「よし。最低限の荷物だけまとめて、また此処に来い」
「はい、分かり、ました! 待ってて、下さい! すぐ、戻ってきます!」
 慌てて、けれど嬉しそうに出て行くアリエッタの姿を見送って、小さく笑みを浮かべた。
 オラトリオは確かに残酷な部分がある。大事な物のためなら、容赦なく他を切り捨てる氷のように
冷たい部分もある。
 けれど、彼女はルーク達の益にはずだ。そう説得すれば、きっとアリエッタの延命処置を取ってく
れるだろうと、アッシュは兄を信じる事にした。
「アッシュ様、良かったですね」
 その言葉に顔を上げれば、部下がにこにこと人好きする笑みを浮かべていた。
「まぁ、そうだな。アリエッタが来てくれれば、選択肢が増える」
「いえ、そうではなくて」
「は?」
 にこにこ笑う部下に、厭な予感がした。
「青春ですね、アッシュ様!」
「え、ちょ」
「聖歌の兄上様にご報告するネタが増えて、私としては嬉しい限りです!」
「おま、何云っ」
「甘酸っぱい甘酸っぱい! 柑橘系の香り満点ですね!」
「聞けよ人の話しを!」



 了


 ルクアリがあるなら、アシュアリがあったって、いいじゃない?!←
 と云う訳で、ツインアビスではアッシュ×アリエッタを推奨しようと思います。ツンデレ×クーデレっ
て良いと思います! アッシュの部下もアシュアリ推奨派です。(笑)
 アッシュはルークを「アレ」呼ばわりしてますが、親愛の表れです。熟年夫婦的な。←
 決して蔑んでとか、心の中では屑と思ってるとかではないです。断じて!(必死だ)



047.コーラル城
 カイツール軍港行きの船の中から、遠目にコーラル城が見えた。”曰く付き”の城を目にして少し
ばかり不快な気分になったが、表情に出すような事はしない。
 ラヴェンダーは無表情と云う訳ではない。感情の起伏もそれなりにある。だがそれを分かりやす
く顔に乗せる事はしない。”出来ない”と云うのが正しいかも知れないが。
 直接視る事はせず、旅の同行者の存在を探る。下手に視線をくれてやれば、会話の切っ掛けに
なってしまう。それは御免だった。
 この男――ヴァンと会話するのは、正直疲れる。高度な話題に付いて行けないとか、趣味が合わ
ないとかそう云った軽い次元の問題ではない。
 ヴァンは、自分以外の人間を見下しているのだ。そして、それを隠す気がない。ロボットであるラ
ヴェンダーにすら悟られるくらいなのだ。駄々漏れ、と云う奴である。
 ラヴェンダーに限らず、ロボットと云う存在は人間に対して好意を持つように作られている。人間
に敵意を持つ事はご法度とされ、ロボット三原則と云う物すら制定されているくらいだ。
 ラヴェンダーのように、犯罪者から人間を守る護衛型ロボットや、弟らのような戦闘型ロボットは
例外的にその三原則を緩められているが、それでも根本は同じだ。
 ロボットは、作り出されたその瞬間から、人間を愛するように決められているのだ。
 だから、人間に危害を加えるものが許せない。その人間が、自分にとって”大切な者”であるなら
ば尚更だ。拒絶反応すら出て、徹底的に排除するだろう。
 それが同じロボットであるならば破壊を、兵器や武器であるならばやはり破壊を、そして人間であっ
たならば――排除を。
 ロボットは人を殺せない。殺してはいけない。例え相手が犯罪者でも、気狂いでも、死刑囚であっ
ても、殺してはならない。
 だから、ラヴェンダーはヴァンが嫌いだった。
 大事な弟に危害を加えると分かっているのに破壊する事が許されない人間だから、嫌いだった。
排除したくとも出来ないから、どうしようもない。
 いっそ、犯罪者の烙印を押し、弟の生活範囲内から排除出来たのならば、これほどの嫌悪感を
抱く事もなかっただろうに。
「おや……コーラル城をそんなに見つめられて、いかがなされた?」
「別に視てなどいないが」
「はは……。いや、私にとっては中々感慨深い場所でしてな」
 何故か会話が始まってしまった。
 ただ景色を眺めていただけだと云うのに、面倒な事この上ない。しかも語りに入られた。
「あそこでルークを見つけたお陰で、こうしてファブレ家と懇意に……」
「あぁ、そのせいで大事な弟共が誘拐されたな。ファブレ家最大の汚点だ」
 吐き捨てるように云ってやれば、ヴァンはよく動く口を閉じた。云い訳をされる前に、畳みかける
ように言葉を告げる。
「貴様がよその家に気をやる前に、自身の妹をしっかり躾けておけばこのような事にはならなかっ
ただろうにな」
「……申し訳ありません」
「そう思うなら無駄口を閉じろ。不愉快だ」
 ヴァンはこの旅の最中、事ある毎にラヴェンダーを懐柔せんと会話を仕掛けて来る。自分がいか
にファブレ家にとって有益な存在かを恥ずかしげもなく主張し、ついでと云わんばかりにルークらの
身を案じる。
 そしてその言葉の裏にある感情を、ラヴェンダーはしかと読み取って居た。
 ――人間の紛い物如き、どうとでも出来る。
 舐められた物だ。
 ラヴェンダーは最強ではないが、強者であると自覚はしている。強者のプライドを持ってして、油断
すると云う事は決してしない。だから、この痴れ者の言動に惑わされる事はない。
 信じる者も、大事な者も、既に作られた心の中にある。
 揺るがない事、それがラヴェンダーの強みだ。
 その揺るがない事――弟達に早く会いたいと、ラヴェンダーは強く思った。



 了


 ラヴェ姉さんが好きだー。(見れば分かる)
 しかし、本当に取り付く島もないな……。少しヴァン先生が不憫だwww←

 ロボット三原則についてはググってくだせぇ。(おい)



048.謎の音機関
「あ、そう云えばさ」
「ん? どうした信彦」
「さっきほら、コーラル城がちらっと見えたでしょ? それで思い出したんだ」
「何をですか?」
「この前、クリムゾンさんが教えてくれたんだけど、ほら、あそこでルーク兄ちゃんが見つかったで
しょ? だから何か手掛かりがあるんじゃないかって城中を調査したら、地下に変な音機関があっ
たんだって」
「変な音機関?!」
「何ですかそれ信彦坊ちゃんもっと詳しく!」
「食いつくな音機関オタク共!」

「あはは。面白い物じゃないよ。――超巨大なフォミクリー用の音機関だって」
「あぁー……」「あぁー……」
「何か、あれだよね」
「分かりやすいにもほどがあるよな」
「ヴァン先生って何であんなに爪が甘いんだろ?」
「周囲を見下してる人間って皆そうだよな」
「そんで足元すくわれる訳で」
「信彦坊ちゃん、その音機関はどうなったんです?」
「即効処分したって。「人の敷地内で勝手に何やっとんじゃいあの馬鹿は!」って事で」
「ですよねー」
「……僕、ちょっとヴァン先生に同情……」
「泳がされてる事に気付かないような奴に同情しても一ガルドも儲からねぇぞ」
「ルークったら冷たい」
「シグナルが甘いんだよ!」



 了


 アッシュもアリエッタも味方なので、カイツール軍港襲撃が起きません。なのでさらっと流します。
 いや、本当にあれは、どうなんですか……。確かに隠し部屋ではあったけど、凄い簡単なギミック
だったじゃないすか。冷静に考えて、あんなんすぐバレるわ。←
 ツインアビスのルークは身内以外の人間に対してかなりクールなので、シグナルが甘い子になって
しまう。でも甘いからこそシグナル! 敵にも同情しちゃうシグナルが可愛いんだ!
 可愛ければ全て許される。(おいいいいいい!)

 ちなみに、シグナルも音機関オタク。ガイの影響である。謝れ! ガイ謝れ!←



049.音譜盤
「そう云えば、船でバチカルに帰るなら、ケセドニア経由するよね?!」
 突然シグナルがパープルアイをキラッキラと輝かせながら云った。
 期待に満ち溢れた様にルークと信彦はきょとんとしたが、ガイはハッと何かに気付いた表情になり、
突然シグナルの手を握りしめた。
「はいそうですシグナル様! ケセドニア経由ですよ!」
「いやったぁぁぁあああああ!」
 踊り出した二人に、未だに跡を付けて来ている不審軍人共が奇妙な顔付になったが、それは信彦
らには関係のない事。二人はまた病気が始まった、と重いため息をついた。
「云っとくけど、ケセドニアには補給と乗り換えで寄るだけなんだからね! 買い物する時間、そんな
に沢山取れないよ?」
 釘を刺すように信彦が云えば、二人から即座に「えぇー」と不満の声が上がる。普段は完璧な使用
人も、シグナルと一緒に盛り上がっている時は話が別だった。
 二人がケセドニアについて盛り上がってるのには、理由がある。二人の共通の趣味である――音
機関、譜業が安く手に入る場所だからだ。
 国境の街、商業の街と云う事で、最新作から中古、販売停止になった掘り出し物まで、ありとあら
ゆる譜業が手に入るケセドニアは、音機関マニアにとっては夢の街なのである。
 バチカルの外に出る機会が全くと云って云い程ないシグナルとガイは、このチャンスに手に入れて
おきたい譜業でもあったのだろう。心の底から残念そうである。
「信彦のいけずー!」
「俺、給料三カ月分持ってきてたのに……!」
「おめーら何しに来やがったんだ」
 二人がバチカルを出た目的は、ルークと信彦の保護であったはずなのだが。見つけた後だからなの
か、箍が外れているように見受けられる。
 ルークのげんなりとした突っ込みに、シグナルが即座に反応した。
「当然信彦を助けるために来たさ!」
「おい、シグナルさんよ。大事な所が抜けてる。忘れちゃいけない人を忘れてる!
「俺はちゃんとルーク様も数に入れてますよ?!」
「フォローになってねぇんだよ馬鹿ガイ!」
 漫才のようにテンポの良い三人の会話に、信彦があははと笑い声を上げる。それに反して、信彦を
止まり木にしているコードはうんざりした顔付きだ。
「おい信彦。あのアホ共、止めたら止めたで五月蠅いぞ」
「うーん。それもそうだけど……。二人とも、一体何が欲しいの?」
 聞けば二人が同時に信彦を振り返り、荷物から取り出した「週刊 アイラブ譜業」を手にして詰め寄っ
て来た。ちなみに本の題名、ラブの部分はご丁寧に赤いハートで表現されている。二人の愛読書であ
り、何度か投稿を行い、載る度に狂喜乱舞している雑誌である。
「ほら此れ! 此れ! ベルケンド音機関研究所の一般向け最新娯楽譜業、「自鳴奏(オルゴール)」
第一号!」
「初回限定版のみ、音譜盤が一枚セットで付いて来るんです! これを買い逃したら音機関マニアの
名折れなんですよおおおおおおお!」
「限定版だったらもう売り切れてるんじゃないの?」
「大丈夫、予約済みだから」
「後は取りに行くだけなんです」
何だその手際の良さ! お前ら本当は買い物に来たんだろ?! オレらそのついでかコラァッ!」
「そんなまさか」「滅相も無い」
「真顔の即答が尚更怪しい!」
「へー。いいねぇ、オルゴールかぁ」
 のほほんとした信彦の言葉に、ルークへ顔を向けていた音機関マニア共が同時に振り返った。必死
なその顔を見て、信彦はほんわかした笑みを浮かべる。
「色々見て回る時間は無いだろうけど、これを取りに行くくらいならいいんじゃないかなぁ?」
「ほ、本当ですか信彦坊ちゃん!」
「うん。その代わり、買ってきたら俺にも聴かせてね」
「あったりまえだろ! やったぁ! ありがとな信彦! 大好きだあ!」
 信彦を抱きしめた後、二人は喜びの踊りを再開させる。その様を微笑ましそうに見ている信彦に、
ルークはそっと耳打ちした。
「い、いいのか信彦。寄り道なんて許して……」
「まぁ全部見て回りたいなんて云い出さないだけましじゃない? 一つ買いに行くくらいなら、そんな手
間にならないし。変に押さえつけると拗ねちゃうし」
 そう云ってから信彦は、にっこりと花のような笑みを浮かべて。

「此れが飴と鞭だよ。覚えておいてね、ルーク兄ちゃん」

 天使のように優しい声で云った。
 ルークはただ、「うん」と頷く事しか出来ず。弟の頭上に居る師匠に、「何か云って下さい……!」と
ばかりに目を向けたが、クールな師匠からは何も返って来なかった。
 音機関マニア二人だけが、幸せそうに踊っていた。



 了


 シグナルがどんどん変な子に!← ガイのせいだあ!(責任転嫁)



050.国境の砦
「証明書も旅券も無くしちゃったんですぅ。通して下さい、お願いしますぅ」
 身体をくねくねと動かしながら、甘えたような――悪い云い方をすれば、頭の悪さを前面に押し
出した声で云う少女を見て、ルーク一行は「うわぁ」と思った。それぞれ性格も年齢も違うと云う
のに、同じ事を同じ時に考えてしまうくらい、その少女の行動は最悪だったのだ。
「おい……、あいつ何やってんだ……?」
「え? 証明書と旅券を無くしたけど、関所通せって云ってるんじゃないの?」
「うん。シグナルの云う通りだけど……」
 馬鹿じゃないのか、と云うのが正直な所だ。
 証明書と旅券の紛失をしただけでも馬鹿だが、それを持たぬまま関所を通せと云うのも相当の
馬鹿だ。
 人間は完璧ではない。粗相もする。失敗もする。だから、証明書と旅券を無くしてしまったのなら
ば確かに「仕方が無い」事だ。
 だが、無くしたならば役所に行って申請するのが普通だ。「紛失したので再発行して下さい」と云
い、きちんと書類を用意して申請すれば、大体の場合再発行して貰える。
 それが普通だ。当たり前の一般常識だ。
 もしそれを知らなくとも、関所を越えるのに証明書と旅券が必要と云う知識があるならば、詰所へ
行って「紛失してしまったのですが、どうしたら良いでしょう?」と聞くのが普通ではないだろうか。
 無くしたけど通せ、などと云う馬鹿がどこに居る。
「いや、此処に居るな。目の前に」
「皆様、目を合わせてはいけませんよ。馬鹿に違いありませんから」
 ガイの言葉に、子供たちは素直に頷いてそっと視線を外した。関わりたくないと、全員が思った。
 持っていた証拠もない人間をほいほいと通すような関所、関所ではない。美術館や博物館でさえ、
入場券を持ってない人間は入れないと云うのに。あの少女、前述の施設に入る時でさえ、「入場券
買ってあったんですけど、無くしちゃったんです。通して下さい」とでも云うのだろうか。
 それは……痛すぎる。
「……残念ですが、お通し出来ません」
 恐らく、心内はルーク達と同じだろうに、国境警備の兵士はとても丁寧な態度でそう云った。
「兵士さんも大変だね」
「まぁ仕事はどれも大変だけど……頭おかしい人間に関わる確率は高いだろうな」
 一気に国境警備兵への同情が集まる。同情した所で、彼の職務環境が変わる訳ではないのだ
が、善良な人間であれば心を痛める光景だ。
 せめて自分達は素直な良い通行者として、迷惑にならないようにしよう、とルークは思った。
「……んん?」
「どした、信彦?」
「いや、あの子ってさぁ……」
 首を傾げながら信彦は、「いやでもまさか……うーん?」と呟いている。信彦の頭上に止まったコー
ドが、今一度「どうかしたのか」と聞けば、「まさかとは思うけど……」と前置きをしてから、
「あの子、”自称”導師様と一緒に居た、導師守護役の子じゃない? 確かアニスとか……」
「は?」「はい?」「え?」「なぬ?」
 その言葉に、全員が「まさか」と云う顔になる。いくらなんだって、導師守護役と云う要職に就いて
いる人間が、あんな馬鹿な言動する訳がない。騙りをしていたとしても、酷過ぎる。
 思わず少女の方を見たルークは、さらにとんでもない物を目撃した。
「ふみゅぅ〜……」
 あからさまにしょんぼりしてます、と云う態度で関所へ背を向けて、少女がこちらへ歩いて来る。
一度振り返り、硬い態度を崩さない兵士を見ると、目がみるみるうちに吊りあがり――
「ちっ……月夜ばかりと思うなよ
 悪意しか込めていない声で、云った。
「……」「……」「……」「……」「……」
 全員が沈黙し、こちらへ向かって来る少女を避けるようにして建物の蔭へと入る。全員が示し合
わせたかのように、無言で、素早く。
 お陰で少女に気付かれる事も声を掛けられる事もなく、やり過ごす事が出来た。
「……あんま、云いたくないけど、さぁ……」
 ルークが云えば、皆の目が集中した。
 どんよりと重いため息を一つついて。
「……どんな教育受けたらあぁなんだよ。……親の顔が見てぇ」
 大事な物を無くし、それを反省もせず開き直って通せと強要し、それが受け入れられなければ舌
を打って悪態をつく。
 どう見てもどう考えても――好意を抱ける対象ではないし、ルークが云った通り、「親の顔が見た
い」と云われてしまう手合いだ。
 他の四人(?)は特に何も云わなかったが、同意だと云わんばかりに目を伏せたのだった。



 了


 愛らしい外見の少女の二面性★とか、ぶりっ子腹黒★とかはまぁ、好物ではありますが。
 やらかす場面を選べよ、って云う。
 対人関係ならネタとかキャラ性で済みますけど、職務を忠実にこなしている人に悪態つくとか最
悪じゃないですか……。文中でも書きましたけど、アニスのあれって、遊園地とか動物園入るのに
前売り券買ってあったけど無くしちゃった、でも買ってはあったんだから入れてよ、ってのと近いの
では? つーか日本で云うなら、飛行機の搭乗券とパスポート無くしたけど、出国させろって云
うのと同じなんじゃ……?
 普通なら家に取りに戻るか、無くした自分が悪いと買い直すか、職員に相談するかだと思うんで
すけど。何ですかあれ。萌えが見当たらないんですけど。せっかくアニス良いキャラしてるのに、
台無し何ですけどおおおおおおおお!
 スタッフ、本当に何を考えてあのシーンを作ったのですか……。ドン引きですよ!


 執筆 2010/03/05