落乱×アビス、憑依ネタ



 雲麻自作人物(落乱の捏造生徒)がルークに憑依していると云う特殊ネタです。
 流石について行けんわ、と云う方はブラウザバックを押して下さいまし。

 捏造生徒についてはコチラコチラをご覧ください。


・鳴瀧晴次:ユリアシティ・アッシュ厳しめ?(軽く乱闘表現あり)
・下関大治郎:グランコクマ・マルクト厳しめ
・備前鶴ノ丞:タタル渓谷・ティア厳しめ(暴力表現あり)
・加藤千草:タルタロス・ジェイド、ティア厳しめ(流血、死表現あり)















 − 鳴瀧晴次とアッシュ君。

「お前は俺の劣化複写人間だ。フォミクリーで作られた、ただのレプリカなんだよ!」
 何やら高圧的でおでこの広い人にそう云われたが、晴次は「はぁ」と気の抜けた返事をする事しか
出来ない。
 なるほど、この体の持ち主は目の前の人間から複製されたらしい。凄い技術がある物だと感心する
が、それだけだ。妖術や幻術の類で無く科学であるのなら、否定する必要も無し。
 日本にこの技術があったら鶴ノ丞先輩辺りが泣いて喜びそうだなとは思ったが。あの人、美術品収
集するの趣味だし。仙蔵先輩なら焙烙火矢を大量にふぉみくりーしそうだ。それで行くと留ちゃん先
輩や伊っちゃん先輩も喜ぶな。
「はっ、間の抜けた顔しやがって。レプリカってのは脳みそも劣化してやがるんだな!」
「はぁ、申し訳ありません」
 劣化と云われても、自分は目の前の男――名前はなんでしたっけ。男の人の名前って、意識してな
いと覚えないんですよね、僕――の複製ではなし。気分は良くないが、腹も別に立たない。罵倒され
ているのは晴次の知らない、ルークと云う人なのだし。
 晴次の適当な態度に腹が立ったのか、男が剣を抜いた。随分と短気な人だ。鞘当てをされた武士と
ていきなり抜きはしないぞ。相手の態度次第では抜くが。
「こんな野郎に俺の居場所が奪われたかと思うと、涙が出てくる!」
 なら勝手に泣けばいいのに。そう思いながら、腰に下げた刀にそれとなく手をやっておいた。
 晴次の得意技は、戸部直伝の居合抜きだ。わざわざ相手に倣って抜かずとも良い。
「さっさと抜きやがれレプリカ野郎! 俺が直々に仕留めて―――」
 居合を知らぬらしい男が喚くが、それに乗ってやる必要もあるまい。それに後ろから、心強い味方
が来ていた。
 背後の気配に気づいたのか、男が言葉を途切れさせ振り返る。
 途端。
「やっろぉおおおおお! てんめぇ、ぶっ殺おおおおおおおす!」
「平伏しなさい下郎があああああああ!」
 トクナガを巨大化させたアニスがその拳で男の側頭部をぶん殴り、吹っ飛ばされた男を的にナタリ
アが的確すぎる投射をする。動いている物をあそこまで的確に射抜くとは、恐ろしい腕前だ。
 晴次の後ろからティアが走り出た。止める間もなく、彼女は詠唱を始め、
「フォーチューン・アーク!」
 凄まじい威力を誇る秘奥義を披露してくれた。
 本の数秒でぼろ雑巾になった男に向かって、手を合わせる。嗚呼、これまで幾度か手合わせしたと
云うのに、彼はちっとも理解していなかったのだと同情交じりに。
 有難い事に、三名の女性はとてもとても晴次を大事にしてくれていると云う事実を、全く分かって
いなかった彼に向かって。
 頭が劣化してるのは貴方の方では、と思ったのは内緒だ。
「ルーク! 大丈夫ですの?! お怪我は?!」
「この馬鹿がなんか云ってたみたいだけど、もう一発ぶん殴ろうか?!」
「止めは私に任せて頂戴ルーク!」
 拳を握り、とても優しく良い笑顔で三人は云う。手に手に武器を持ち、足元にぼろ雑巾が無ければ
とても華やかな光景だ。
「いえいえ。貴方がたのお手を煩わせる事ではありませんよ。充分です。有難うございました」
 三人からの優しい申し出を、ルークと呼ばれた晴次はやんわりと断った。
 その言葉に、「んもう、ルークは優しいんだからぁ」とか「そんな所が素敵なのですわ」とか「こ
んな下種にまで情けをかけるなんて……素晴らしいわルーク」とか、晴次を褒める言葉ばかりが飛び
交う。
 ぼろ雑巾になった男に対しての言葉は無い。
 ふとアニス、ナタリアらの後ろを見れば、茫然としているジェイドと、「女って怖い……」と震え
ているガイとイオンが居た。彼らに向かって、にっこりと微笑む。
「あぁ、丁度良い所に……。すみません、ジェイドさん、ガイさん、手伝っていただけますか?」
「は、はぁ、何をお手伝いすれば……」
「宜しいので……?」
 逆らえば女性らの怒りを買う事は必須であるため、彼らは晴次の言葉に逆らわない。虎の威を借る
なんとやらだなぁ、と思いながら、晴次は言葉を続けた。
「このまま彼を放置する訳に行きません。運ぶのを手伝って下さい」
「まぁ、ルークが自らやる必要はありませんわ。男手が二人もいるのですから、任せても宜しいでしょ
う? ……ねぇ、ガイ、ジェイド?」
 さりげなく晴次の隣をキープして、ナタリアが妖艶な笑みと共に云う。男二人はこくこくと頷くし
かない。
「さぁ、行きましょうルーク。アクゼリュスの事で疲れてるんだから、早く休まないといけないわ」
「そうそう。無理矢理超振動使わされちゃったんだし、体に異常があったらた〜いへん! お医者様
も呼ばなきゃ!」
 きゃいきゃいと女の子特有の高く甘い声が上がる。
 その様を見て、どこの世界であっても女性とは愛らしい存在だと、晴次は笑みを浮かべた。



 了


 此れ以上長くなるとSSじゃないのでぶつ切りました。
 晴次は外見ではなく中身がモテる男なので、ルークに憑依してもたらしっぷりは健在です。周りが
勝手にほいほい引っ掛かります。
 ただアッシュが可哀想なだけの話ですね! すいません!




 − 下関大治郎とマルクト。

「お前たちか。俺のジェイドを連れ回して帰しちゃくれなかったのは」
「別に連れ歩きたくて連れ歩いていた訳ではない。こんな役立たず、熨斗を付けてさっさと返品した
かったのだが、状況が許さなかっただけだ。望み通り返してやるから、二度と俺に近づけてくれるな。
……不愉快だ」
 茶目っけを多大に含んだ皇帝の言葉に、大治郎は淡々と言葉を返した。
 その言葉にマルクト陣営も同行者達もぽかんとしてしまう。ガイとナタリアは揃って両頬を押さえ、
失神寸前だったが。
「えぇっと……、そんなに役立たずだったか? こいつ」
 なんとかそれだけを云うピオニーに、大治郎はこっくりと大きく頷いた。何がどう役立たずだった
か説明を求められた訳で無し、何より喋るのは面倒くさい。ああ喜三太に癒されたい。
「まぁ、なんだ……。どの程度役立たずだったか、教えて貰えるかルーク殿?」
「……」
 乞われてしまっては仕方がない。面倒くさいが口を開く。
「和平の使者なのに相手の国の人間に喧嘩を売る、部下を全員殺され『タルタロス』を奪われる、そ
の際あんちふぉんすろっととか云うものを食らってレベルが一ケタになる、王族らしいルークを前線
に立て後衛でせこい譜術とやらを唱える、せんとびなーで部隊全滅の報告もしないで徒歩で貴族と導
師を移動させる、かいつーる軍港が襲われた際『鮮血のあっしゅ』に呼び出された貴族と導師を止め
ず危険な場所へ行く事を黙認する、親善大使に選ばれた貴族に対し役立たずとか世間知らずとか云う、
決定権があるのは親善大使にも関わらず勝手に物事を決め「おや、これを決めるのはきむらすかの親
善大使様でしたねぇ」と事後承諾を取る、こちらの話も聞かず勝手に判断し「馬鹿な発言にいらいら
させられる」と立ち去る、気絶している親善大使を置いて行く、久しぶりに会ったと思ったら存在を
無視、声をかけたら「おや、ルーク。貴方もいらっしゃいましたか」と倒れていた人間に対して大人
げない厭味、それから……」
「ま、待った待った、ストップストップ……!」
 淡々と感情を込めずつらつらと述べる大治郎に、皇帝自ら制止が入る。その顔色は悪く、汗をぐっ
しょりと掻いていた。それは周りの臣下達も同じだったが。
 ただ一人ジェイドだけは、平然としていたが。
「全く……よくもそこまで覚えている物ですねぇ。貴方、粘着質すぎるでしょう」
「いつか報告する機会があるだろうと思い、書き残しておいたんだ。ようやく役に立って俺としては
嬉しい限りだな」
 嬉しいと云いつつ、無表情は変わらない。体が変わっても表情筋が死んでいるとはどう云う事なの
だろうかと思う。
「俺は師範から、足軽(兵士)は城主の後継ぎに対し、最大の敬意を持って接すると聞いたのだが、
まるくととやらではそうではないのか? 此れが常識なのか? だとしたら俺の我が侭かも知れない
が、己の常識に沿わない人間と居るのは苦痛でしかないのでな。とりあえず引き取ってくれ」
「何云ってるのルーク! 大佐がいなくちゃ戦力的に苦しくなるじゃない!」
「譜術云々ならあにすも上手いだろう。回復役が入れば俺とがいだけで何とかなる。輪を乱す痴れ者
などいない方がよほど効率がいい」
「えぇ〜、アニスちゃんそんなに期待されちゃってるのぉ? 照れる〜」
 皇帝の御前云々と云う状況は、全員頭にない。好き勝手に喋っている。そして同行者はジェイドの
人格ではなく戦闘能力しか必要としていない。
 何とも歪な連合だ。
「……ジェイド、一つ聞こうか」
「何ですか陛下」
「ルーク殿が云った事は、本当か?」
 項垂れて額を押さえている皇帝の顔は見えないが、地を這う低音が彼の心境を如実に表している。
それに気付かないのか、ジェイドは「えぇ」と軽く頷いた。
「全く、あそこまで事細かく覚えているとは。その能力をもっと別の事に生かしたらいいでしょうに」
「……そうか。……衛兵! ジェイド・カーティスを捕えよ!」
「な?!」
 命令を今か今かと待っていた兵士たちが飛び出し、驚いているジェイドを手早く簀巻きにする。勿
論、譜術を唱えられないように猿ぐつわもして。
「た、大佐?!」「はわわわわ、何でぇ?!」
「いや、何でも何も……」
「王族に不敬を働いた軍人への、当然の処置ですわ……」
 驚くダアト軍人とは対照的に、キムラスカ組は疲れ切りながらも悟った表情で云う。この二人は他
の連中に比べて見れば、常識的だ。皇帝の前で許可なく喋っているけれど、今さらそれを指摘する人
間もいるまい。
「ルーク殿……。我が国の軍人が無礼を働いた事、深くお詫び申し上げる」
「謝罪で腹など膨れんからいらん」
 皇帝の謝罪を大治郎はにべもなく切って捨てる。
「俺に二度と近づけさせなければそれでいい。……そう云えば、賢帝と呼ばれていたか」
「ん、あぁ、まぁな」
「人の噂が全く持って当てにならないと云う事を再認識させて貰えたな。良い勉強になった、こちら
こそ礼を云わせてもらおう。アリガトウゴザイマス、ぴおにー陛下」
 痛烈な皮肉に、皇帝の顔が引き攣る。だが、云い返しては来なかった。皮肉られても仕方がない事
をしでかしたのは、マルクトなのだから。



 了


 ピオニー陛下初登場場面。大治郎ならこう云うだろうな〜と思って。自分をルークだと思っていな
いので、凄く客観的に話せると思います。
 無表情で無口で無愛想ですが、喋る時は喋ります、この男。



 − 備前鶴ノ丞とティアちゃん。

「ほうほう、なるほどのぉ。お主はだあととやらの兵士で、貴族である私(ルーク)を事故とは云え
誘拐してしもうた、と云う事じゃな?」
 ティアの説明を聞いたルークが、薄い笑みを浮かべて云う。いつの間にか淡い萌黄色の羽織を着て
(あれは確か、ホドの伝統衣装では?)、扇子を持っている彼に少し違和感を感じたものの、ティア
は素直に頷いた。そう云えば、喋り方も妙だ。まるで年寄りのようではないか。
「ほ、ほほほ……、では、私のする事は決まったの」
「えぇ、分かってくれてよかったわ。早く此処から移動しましょ――」
 ヒュッ――と空気を切る音を聞いた。途端、頭に衝撃を受け、ティアは花畑に倒れ込んだ。
 ぐらぐらと脳が揺れる。とろりとした液体の感触は、血だろうか?
 殴られた。そう気付き、カッと頭に血がのぼった。
「な、にをするの?! いきなり……!」
 起き上り怒鳴ると同時に、今度は腹を蹴り飛ばされた。蹲って嘔吐(えず)くティアの上から、冷
酷な声が降ってきた。
「ほほ、ほ、ほ、ほ……。馬鹿な女子(おなご)じゃの。勾引(かどわかし)は大罪じゃと云うのに、
ちぃとも理解しておらん」
「そ、……げほ、それは、わざと、じゃ……!」
「態とでなければ許されると思うておるのか? ――とんだウツケじゃの。親の顔が見てみたいわ」
 笑い声さえ消した低い声に、腹の底から冷える。
 何なの、此れは。
 世間知らずの貴族のお坊ちゃまじゃないの?
「世には数多の犯罪があるがの、私はその中で勾引が一番嫌いじゃ。だから勾引す者も大嫌いじゃ。
……殺してしまいたくなるくらいにのぉ」
 うっそりと笑みを浮かべたルークを前に、ティアは声にならない悲鳴を上げ恐れ戦いた。
 貴族のお坊ちゃまが出来る、笑みではない。その程度の事、ティアにだって分かる。
 あれは、人を痛めつける事に慣れた人間の笑みだ。他者を踏みにじるのに躊躇など感じない、搾取
する側の人間の笑みだ!
「た、たすけ、わ、私……!」
「ほほほ。そこまで怯えずとも良いではないか。いくらなんでも、直ぐに殺しなどせぬわ。詮議の末、
きちんと刑に処して貰わねばならんしのぉ」
 上品に笑いながら、ルークは云う。ティアの全身がガタガタと震え出した。今さらながら、自分が
しでかした事の大きさに恐怖したのだ。
 この恐ろしい人を怒らせるくらい、自分はいけない事をしたのだ、と。
「まぁ、しかし」
 突然ぴたりと笑うのをやめ、真面目な顔になる。
「此処がどこかも分からぬし、私が何故こんな事になったのかも分からぬ。分からぬ事だらけの中、
情報源はお主だけのようじゃ」
 こんな罪人でも居ないよりましかのぉ、と少しだけ呑気な声が云った。
「そうじゃ、私の云う事を聞くなら情状酌量してやっても良いがの。どうじゃ?」
 死を避けられるかも知れない。そう思ったティアは、必死になって何度も首を縦に振った。
 その様をルークは満足げに見、うむうむと好々爺のように頷く。
「ではまず、傷の手当てをするが良い。それから、私が帰る場所へ案内して貰おうかの」
「は、はい」
 頷いて、ティアは譜術を唱え傷を癒した。それにルークが目を見開く。何か驚かれるような事をし
ただろうかと怯えながら、言葉を続ける。
「ではまず、この渓谷を降りて……」
「ほぉ、夜の山を歩くと? 明かりもないのにか? 私は夜目が利くから良いが、お主は大丈夫かの?
野生の動物に襲われても、私は知らぬぞ」
 さらりと云われた言葉に硬直する。そうだ、確かに山を降りる最中魔物が居るだろう。自分は第七
譜術士、戦闘向きではない。不意打ちなど受ければ、間違いなく死んでしまう。
「い、いえ、そうですね。こ、ここで一晩明かしましょう」
「うむ。そうしよう。ところでお主、武器はあるか?」
「は、はい。ロッドとスローインダガーを……」
「ろっど? あぁ、その杖の事か。すろーいんだがーとは何じゃ?」
「え? えぇと、この投げナイフの事で……」
 ガーターベルトからナイフを取り出しながら云えば、ルークが顔をしかめた。何か怒らせるような
事をしてしまったのか。体が震える。
「……あ、あの、何か……?」
「……女子がそのような場所から武器を出す物ではないわ。はしたない」
「ご、ごめんなさい……」
 普段そんな事を云われたら、「私は軍人なのだから、女扱いなどしないで」と云うティアだったが、
最早そのような事云える訳も無い。素直に謝罪をしていた。
「まぁ良いわ。さて、一晩明かすにも地べたでは心許ないの。……文次君の真似をするのは業腹じゃ
が、木の上で寝るか」
「き、木の上?! ど、どうやって、そんな……」
「? 簡単じゃろ。別に。枝に座って寝ればよいだけじゃ」
「え、えええええ……?」
 困惑するティアをよそに、ルークはひょいひょいと登って行く。その様はとてもこなれていた。公
爵家の庭でいつも木登りなどしていたのだろうか。
「お主も早うせぃ。それとも地べたで寝るか?」
「い、いえ、私も行きます!」
 手ごろな木に手を掛け足を掛け登る。此れが意外と難しかった。ルークは何でもないかのように登っ
て居たが、相当な力が必要だし、手や足を掛ける場所も慎重に選ばないと滑ってしまう。
 ようやく登れた時には息も切れ切れ。待ちくたびれたのか、ルークは寝息を立てていた。枝に腰か
け、幹に体を預け、すやすやと。
「……」
 ティアも真似をしてみるが、どうやっても安定を得られない。少しでも眠気に身を預けようものな
らば、ずり落ちそうになる。
 結局ティアはその晩、一睡も出来なかった。



 了


 捏造生徒で一番怖いのは鶴ノ丞です。
 大店の次男坊なお鶴は、幼少時誘拐された事があります。その時表の拍手ではとても書けないよう
な目に遭いましたので、誘拐と云う犯罪が大嫌いです。
 その大嫌いと云う思いも「病弱な兄が同じ目にあったら死んでしまう」と云う恐怖から来ている嫌
悪感と憎悪です。つまりブラコンであります。←



 − 加藤千草とタルタロス。

 ぶおんと重い物が振り切れる音がした。次いで、ごしゃと柔らかくも硬い物が砕けた音がする。そ
の音が断続的に響き、辺りは生臭さに支配されて行く。
 ティアは「ひっ……」と息をのみ、ジェイドは唖然としていた。
「ちっ……。雑魚が、うぜぇったらねぇ」
 ごんと音をたて、己の得物を床に付き立ててルークが云う。白い上着のところどころに返り血がつ
いているが、気にした風もない。粗野で野蛮な仕草に、此れは本当に公爵子息かとジェイドは頭を抱
えた。
 そもそも、軍人でも傭兵でもない一般人が、何故こうも容易く人を殺せるのか。
 いや、彼に戦闘を強要したのは自分だ。だが、盾程度になれば――詠唱する時間を稼げればそれで
いいと思っていたのだ。
 しかしいざ戦闘になってみれば、ジェイドやティアに出番はない。今までの敵全てを、彼が一人で
倒していた。
 得物は見た事もない武器だ。鉄製の長い棒の先に、槌のような物――これも鉄製だ――が付いてい
る。バトルハンマーのような物だろうか。それにしては槌の部分が小さいが。
 重量もかなりあるだろうそれを、ルークは軽々と振り回す。彼が一薙ぎすれば人体が壊れ、血が噴
き出し、肉片が舞う。
 その光景に、あれだけ偉そうに戦場を語っていたティアは顔面を蒼白にし、怯えきっていた。
 どこが、ぬるま湯に浸かった貴族のお坊ちゃまか。
 世間知らずの愚か者なのか。
 彼の動きは数多の戦場を切り抜けた戦士のそれだった。
「おい、次はどこ行くよ。俺ぁ此処の構造なんざ知らねぇんだ、案内くらいしろや眼鏡野郎」
 顔についた血痕を乱暴に拭いながら、ルークが云う。
 ジェイドは眼鏡を押し上げるふりをして顔を隠しながら、「次の角を右です」と簡潔に云った。
「あっそ」
 それだけ云って、ルークは歩き出す。しかし二歩進んだ所で再度武器を構えた。ティアは不思議そ
うな顔をするが、ジェイドは敵襲だと悟り詠唱を始めるた。だが、譜術が発動する前に、新たな敵達
もルークの手で始末された。
「ちっ……。いっそ屋根裏でも行った方が早いんじゃねぇか?」
 折り重なった死体を足蹴にしながら、ルークが云う。ティアが「酷い」と呟いて顔をしかめたが、
幸いな事にルークへは届いていなかったようだ。聞こえていたら、ティアはあの鷹の目に睨み回され
ていたに違いない。
「天井裏に隙間はありませんよ」
 機器が所狭しとありますから、と云えば、ルークは実に厭そうな顔をした。
「通気口もねぇのかよ」
「……それでしたら、そこに」
 指し示したのは、人一人やっと通れそうな程度の通気口。それをちらりと見てから、ルークは鋭い
目付きでジェイドを見た。
「見取り図は?」
「ブリッジにあります」
「ちっ、役に立たねぇな糞が。しゃぁねぇ、地道に行くかぁ」
 武器を肩に担いで、ルークはすたすたと歩き出す。その後をジェイド達は、小走りになりつつ追っ
た。ぽたぽたと武器の先端から滴り落ちる血に、ティアが目を背ける。
「てめぇら邪魔だから、敵さん来たら適当に避難しとけよ。俺ぁ味方を傷付けねぇように戦うのが苦
手なんだ」
 その言葉に、ティアが鼻白んだ。傲慢ね、と低音が吐き捨てる。
「貴方一人で戦っていけるとでも思ってるの? 治癒術すら使えないくせに」
「現に俺一人で片付けてるだろうが。てめぇら何かやったか? そこらへんに突っ立ってただけだろ、
この木偶の坊どもが」
「……っ何ですって!」
「俺ぁ戦場(いくさば)だとこいつ使うから、攻撃範囲が広いんだよ。俺と同程度の腕前がねぇと巻
き込んじまうから後味悪ぃんだ。てか、兜かぶってる相手さんの頭より、すっぴんのてめぇらの方が
ふっ飛ばし易いけどな。それでもいいなら戦えよ」
 その言葉、ティアはびくりと肩を跳ね上げた。先程の戦闘風景を思い起こしているのだろう。確か
に甲冑を身につけている神託の盾騎士よりも、ジェイド達の頭の方が吹っ飛びやすそうだ。
「……全く、少しは見直しましたが、やはり貴族のお坊ちゃんですね。周囲と協力すると云う事が出
来ないのですか? その協調性のなさは問題ですよ」
「俺は同程度の実力を持つ奴らとは協力するぜ? だがな、てめぇらみてぇに弱い奴らと共闘すんの
は面倒臭ぇからやらねぇだけだ。手加減なんて高尚な真似、出来ねぇんでな」
「おやおや、酷い云われようですね。私のどこが弱いと――」
 ひゅんと空気が切られる音。脊髄反射で立ち止まる。目の前に振りおろされたのは、ルークの武器。
後数歩このまま進んでいたら、脳天をカチ割られていた。
 それを想像して、脂汗が出る。
「へぇ、その程度の力はあるか。でも甘ぇな。小平太なら俺の得物弾いて攻撃に転ずるし、長次なら
即座に飛びのいて距離を取り縄標で反撃してくんぞ。……てめぇの実力なんざその程度だ。分かった
なら引っ込んでな」
 そう云って、また武器を担ぎ直し歩き出した。
 汗が止まらない。彼は間違いなく、ジェイドを殺そうとしていた。今こうしてジェイドが生きてい
られるのは運が良いからに他ならない。
 彼は恐らく、いや絶対、ジェイドの頭を砕き殺したとしても、何も感じないだろう。弱い奴が死ん
だと思うだけだ。いや、足手まといが減って楽になったと思うかも知れない。
 隣を見ればティアが硬直し、ジェイドと同じく脂汗を掻いていた。
「……彼には、逆らわないようにしましょう」
「は、はい……」
 ジェイドらの事など気にせず、どんどん先に行くルークをまた小走りになって追いかける。
 彼が木偶の坊だの足手まといだの思っているうちは、まだいい。情けをかけて、放っておいてくれ
るだろう。
 だが逆らえば、自分達は彼と同程度の力があるなどと過信すれば、彼は障害物として容赦なくジェ
イド達を打ち砕くだろう。
 封印術を食らったジェイドと、一兵卒に過ぎないティアは、ただ彼の後に黙って従い、彼の邪魔に
ならないようにするしか生き残れる道はないと、心底思い知った。



 了


 此れもぶつ切りで失礼! 命を奪う事について千草に語らせようと思いましたが、面倒臭がって語っ
てくれませんでした。残念。
 別に逆らわれたからって殺しゃしませんけどね、いくらなんでも。殴りはするでしょうけど。(おい)
 千草は卒業後、村に戻って馬借やるので忍者になる気はありませんが、戦忍としての実力は既にプ
ロ並み、と云ういらん設定があったりします。武器も戦用のですしね。
 こう、すげぇ実力持ってて忍者が天職だろ?! なキャラが、敢えて戦と無縁(に近い)職業に就
くってのに萌えます。←
(ちなみに彼の愛用武器は戈(か)と云う古代中国から日本へ伝わった戦車(馬に引かせる二輪車の
事)用の武器です。詳しくは検索してみて下さい。(おいおい))

 特殊な内容の小説を、此処まで見て下さりありがとうございました!
 楽しかったのでシリーズ化するかもしれません。しないかもしれません。←
 リクエストがあったらずずいとどうぞ。このキャラでこのシーンをやって欲しい、とか。お待ちしております。


 沢山の拍手、ありがとうございましたー!