・晴佳とジェイド。6「レプリカ研究編」

「キムラスカは公式発表で「レプリカ研究は食料自給率向上のため」としていましたが……」
「マルクトと違って土地が枯れてやがるからなぁ」
「もしかして、貴方の提唱した計画の一端でもあるんですか?」
「お。本当に鋭い時には鋭いな、ジェイド」
「お褒め預かり光栄です」
「胡散臭い笑みを浮かべるのはやめろ。まぁ、そうだな。レプリカは第七音素の塊だし、適当なも
のをフォミクリーで製作して保管するのも手だ、って話さ」
「それにしては熱心ですよね。特に、生体レプリカについて」
「いやに突っかかるねお前」
「性分なもので」
「んー。……まぁ、お前になら話してもいっかなぁ。レプリカ技術の『始祖』だし。ただ国家機密だ
から他にバラしたらお前の腹バラすからな
「国家機密レベルなのですか……。わかりました。誰にも話しません。ローレライに誓いましょう」
あの浮かれ意識集合体に誓われてもなぁ……。まぁいいか。
 キムラスカが預言重視派なのは覚えてるよな」
「えぇ、勿論」
「重視派ってのは、教団の人間みたいに絶対視してるわけじゃない。良い預言であればその通り
になるようにするが、悪い預言や自分の意にそぐわないものならば避ける――外れるように努力
するわけだ。ま、預言は選択肢の一つ、困った時の参考って扱いなわけだ」
「実際、悪い預言を避けられた人はいるのですか?」
「大勢居る。預言のお陰で災害を避けれた奴だっているし、強盗が入る日を詠まれた奴はそれを
防げたりとかな。便利だよ」
「確かに……。悪い事が起こると先に知れていれば、これほど心強いものはありませんね」
「だけどな、どうしても避けられない預言があるんだ」
「避けられない預言、ですか?」
「そうだ。いまだかつて、死の預言を回避出来た人間はいない。全員、預言通りに死んでる」
「……」
「人間、死ぬと云われりゃ抵抗する。死なないよう、最大限努力する。危ないものを遠ざけて、周囲
の人間にも助力を頼み込んだりする。でも無理だった」
「……」
「そこでキムラスカ上層部が極秘に打ち立てた計画がある。俺たちが生まれるより前から進められ
てる計画だ」
「それが国家機密ですか」
「そう。俺とナタリアもつい最近聞いたばかりだ。題して、『キムラスカ人補完計画』」
「どこの新世紀ですか、と突っ込んだ方がよろしいので?」
「いや、マジだから突っ込まないでくれ。てか、レプリカ研究が盛んで、死の預言が避けられない事
に困ってる、って考えれば、自ずと答え出てくるだろ」
「えぇ。……身代わりですか」
「そゆ事。元は医学方面での計画だったんだよ。臓器移植の拒絶反応とかな。他人なら高確率、
親兄弟でも起こりえるんだから、じゃぁレプリカで臓器作っちまうか! って話でな。そこから枝葉が
伸びて、いっそ死の預言の身代わりにするか、ってとこに行き着いちまった」
「……倫理的、人道的に問題があるように思えますが」
「残念な事に、倫理も道徳も時代の移り変わりで変化しちまうもんなんだよなぁ、これが。絶対王政
であるキムラスカじゃ王が絶対だし、王が黒と云えば白も黒、王が正しいと云えばどんな事も正しく
なっちまうのさ」
「……」
「ま、完全同位体じゃなきゃ身代わりに出来ないって推論も出てたし、レプリカ使ってもオリジナル
も同時に死ぬんじゃないかって云われてた。けど、俺って云う実例が出来ちまったからなぁ。これ
からますます盛んになるだろうな」
「……物凄く」
「あ?」
「肩身が狭くて、謝りたくて仕方がない衝動にかられてます」
「お、じゃぁ俺に謝っておくか? ん?」