「すぐ会えるさ。たった一年なんだからな」
そう云って君は笑った。
たったなんて云うけどね、一年って長いんだよ? 二十四時間を三百六十五回繰り返さないと経た
ない時間なんだよ?
二年生って、高校三年間のうち一番思い切り遊べる時期じゃないか。そんな時に彼女放ったらかし
にするなんて、酷い人。
「大学生になったら、一人暮らししてもいいって云われてんだ。だから、一緒の大学行こうな。俺も
向こうでちゃんと勉強するから、お前も頑張れ」
「うん……」
「八十稲葉って遠いから、こっちには滅多に戻れないと思うけど……。浮気すんなよ?」
「それ、こっちの台詞なんだけど」
半ば本気で云ったけれど、冗談と受け取られたみたいだった。いつもみたいに無邪気に笑って、頭
を軽く撫でて来る。
「メールするよ。電話も」
「うん……」
「……」
黙り込む彼の顔を見る。あ、ちょっと泣きそうだ。私と離れるの、寂しいって哀しいって、思って
くれてるのがわかる。
嬉しい、なぁ。
「いってくるよ」
「……行ってらっしゃい」
ずっと掴んで居た服の袖から手を離す。その瞬間、優しく手を握られた。
温度の高い手の平は出会った頃のまま。優しい記憶に目を閉じた隙に、手はするりと離れた。
アナウンスが流れる。微笑んだまま、君は新幹線へと乗り込んだ。
「またな、いさ」
「またね、留さん」
来年、また、会おうね。
− 楽観主義者の主張。
忘れないで、私の事。
ずっと待ってるから、帰って来てね。
(転勤族に恋してしまった事がそもそもの間違いなんて正論、云わないで)
了
P4三週目を「食満留三郎」でやってるので。←
転校生系の主人公を見る度に、「転校してくる前の学校に彼女とか親友がいたら面白いのに」とか
思う性格悪い雲麻です。
そんな訳で、この話のP4主人公はフラグを乱立させるくせに自ら圧し折ります。彼女への愛故に。
執筆 2011/04/10
