− 初めての○○。 〜 学級委員長委員会のバヤイ 〜 



(学級委員長委員会かぁ。具体的に何をするんだろう?)
 廊下をキシキシ軋ませ歩きながら、庄左ヱ門は考えていた。
 学級委員長はクラスではまとめ役として皆を引っ張ったり、先生から頼まれた雑用をこなしたりしている。
そう云う人間ばかり集まった委員会では、一体何をするのだろうか。庄左ヱ門は朝からわくわくし通しだっ
た。
 どんな先輩が居るのだろうか、時間が余ったら勉強を見てもらえるかな。
 級友からは冷静だと云われる庄左ヱ門も、年相応にうきうきドキドキしながら集合場所である会議室の
前に来てみれば。
 同じ井桁と丸模様の忍び装束を着た男の子が、会議室の前に立っていた。
 手を上げて襖に手を掛けようとしたのだが、何故かその手を下ろしてしまう。それからプルプルと頭を左
右に振って手を伸ばすのだが、またもやその手を下ろしてしまった。
 何をしているのだろうと首を傾げる。
「ねぇ、何してるの?」
「うへぁ?!」
 声を掛けてみたら、予想以上に驚かれた。思い切り声が裏返っている。
「ごめん、……大丈夫?」
「あ、あぁ、うん。こっちこそごめん……。えっと、君、学級委員長?」
 何だか申し訳ない気分になり謝った庄左ヱ門に、相手も頬を染めながら謝ってくれた。同じ一年生だし、
仲良くなれたらいいなと思いながら、庄左ヱ門は手を差し出しながら挨拶をする。
「うん。僕はは組の黒木庄左ヱ門だよ。宜しくね」
 そう云った途端、今まで頬を染めて照れくさそうに笑っていた顔が薄ら笑いになった。不思議に思い首
を傾げる。
「どうかした?」
「何だ。お前アホのは組かよ」
「なっ……!」
 その言葉に、友好的な感情は一瞬で消し飛んだ。云うに事欠いて、アホのは組?!
「失礼な事云うな! 撤回しろ!」
「本当の事だろ! 安藤先生が云ってたぞ。は組のテストの点数は視力検査だって!」
「確かにそうだけど、テストの結果だけでアホ呼ばわりされる覚えはない!」
 テストの結果がメロメロでも、無鉄砲ですぐ厄介な事件に巻き込まれても、我ら一年は組は出席率も
団結力も学園一だと自負している。自分のクラスに誇りを持っているのだ。
 見ず知らずの奴に自分の誇り悪く云われて黙っていられるほど、庄左ヱ門は腰抜けではない。お互
い一歩も引かずギリギリと睨み合った。
 今にも飛び掛り取っ組み合いになりそうな雰囲気は、

「くぉら、坊ちゃん方。何を騒いでおるんじゃ」

 突然開かれた会議室の襖から、ひょっこりと顔を出した青年の声によって、木っ端微塵に破壊された。
「此処は各組の権力者、学級委員長が集まる会議室前じゃ。喧嘩なら他所でせんかい」
 青年で間違いないのだが、言葉遣いがお年寄りのようだった。制服は深い色の緑――つまり、六年
生の物だったが、何故か上に女性用の上着を羽織っている。大変高価そうな綾錦だ。
 顔の造詣はまるで人工物のように整っていて、若い女性が放って置きそうに無いだろうと想像させる。
けれど、口周りに盛大についた餡子のせいで魅力が半減していた。
 長い髪も夜の闇に雫を落としたような艶のある黒色で、サラサラと流れる音がするような美しさだ。だ
がその髪も、今まで寝ッ転がってでも居たのか変な癖がついている。
 珠のように美しく上品そうな外見をしているが、中身は大分ずぼらなようだ。
「あ、えっと、その……」
「お騒がせしてすいません。僕らも学級委員長です」
 口ぶりからして、この人も学級委員長なのだと辺りを付けて云った。すると彼は、「何じゃ」と呆れたよ
うな声を上げた。
「それなら早ぅ入らんか。さっきから待っておったのに、ちぃとも入って来んからのぉ。別の委員会の子らが
喧嘩しておるのかと思ったわぃ」
「すみません」「……すみません」
「ほっほ、そう硬くならずとも、怒っとりゃせん。まぁ、次からは気をつけるようにの」
 そう云って青年はするりと中に戻ってしまった。一触即発だった相手と一度顔を見合わせて、同時に「失
礼します」と声を上げ中に入れる。
 部屋の中で先程の青年が、畳に寝転がっている五年生を蹴飛ばしていた。
「三郎君、起きんしゃい。一年生が来たぞぃ」
「……んぁ。……あ゛ー、やっとっすか。俺より遅刻するなんて大物だなぁ……」
 がしがしと、頭巾越しに頭を掻きながらその五年生が起き上がる。どうやら、今まで熟睡していたらしい。
丸い目がまだとろんと夢見心地だった。
「坊ちゃん達、とりあえず座んなさいよ。座布団はそこから、各自取るようにの」
「はい」「は、はいっ」
 青年が指差した方――座布団が無造作に折り重なっていた――を見、二枚取って渡してから残りを重
ね直した。同室者が綺麗好きと云うのもあるが、庄左ヱ門自身も軽い潔癖症の気があるため、乱雑な物
を放っておけなかったのだ。
 ついでに云うなら、青年の口も綺麗に拭いてやりたい。
 その衝動をやり過ごしながら座布団に座れば、上級生二人が面白いものを見るような目で庄左ヱ門
を見ていた。首を傾げる。自分は、何かやっただろうか。
「さてさて――」
 青年が口を開いた。
「よぅ来たのう、一年生諸君。私は六年い組の学級委員長、備前鶴ノ丞(びぜん つるのじょう)じゃ。
この委員会の総括もしておる。長い付き合いになるか、短い付き合いになるかは分からんが、これから
宜しく頼むぞ」
「私は五年ろ組の鉢屋三郎だ。好きな物は変装、特技も変装だ。ま、お手柔らかに宜しく〜」
 ちなみにこの上級生二人、備前は肘掛に片肘を預け足は横にだれんと伸ばしたまま、鉢屋は湯呑み
だの菓子だのが散乱しているちゃぶ台にだらんと上半身を預けたまま自己紹介している。
 学級委員長の集まりと云うからには、きっちりかっちりしている物かと思っていたが、実際はそうでは
ないらしい。
 まぁ、此れは此れで有りだなと庄左ヱ門は思い、深々と頭を下げた。
「一年は組の黒木庄左ヱ門です。至らない所が多いとは思いますが、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願
い致します」
「ほ! お主、あの一年は組の生徒かえ!」
「へぇ〜。噂と違って真面目そうだ。ねぇ、お鶴さん」
「だからこそ委員長なのやものぉ。ほっほ、黒木君、そう畏まらずともよいよい。肩の力抜きんしゃい」
 どこからか取り出した扇子でパタパタと煽られながら、庄左ヱ門ははいと頷いた。ところで、あのっ
てなんだろう、”あの”って。
「で、そちらの坊ちゃんは?」
「あ……え、あ、はい! い、一年い組の今福彦四郎です! お世話になります!」
 何故かボケッとしていたいけ好かない奴――今福と云うらしい――は、慌てた様子で頭を下げた。
それに対しても備前は楽しげにほっほと笑った。
「今年の一年生は面白い子が多いようじゃのぉ。お、そうじゃ三郎君、お茶を点てて上げんしゃい」
「えー。何で私が。お鶴さんがやって下さいよ」
「お主……。先ほど外の様子を私に見に行かせておいて、さらにはそれか」
「後輩の可愛い我が侭っすよー」
「我が侭なら家を買ってとか銀細工が欲しいとか云って欲しいのぉ」
「それじゃぁモロ囲い女じゃないっすか。そんな高いもんいらねっすわ」
「三郎君は欲が無いのぉ。どれ、茶は私が点てるかの。菓子くらいは勧めてお上げ」
「はいはい。君ら饅頭は好き?」
「好きです」
 素直に頷けば、にっこり笑顔と共に大きな白いお饅頭を手渡された。甘味物は容易く食べられる物
ではないので、素直に嬉しかった。
 それにしても、この二人はとても仲が良いのだなと庄左ヱ門は思った。先程の遠慮の無い遣り取り
からもそれは伺える。年功序列が厳しい忍術学園で、五年生と六年生でありながらあんな明け透けな
会話が出来るのだ。彼らの云う通り、堅苦しくも怖くもない委員会なのかも知れない。
「今福はー?」
 饅頭に齧り付くと同時に、鉢屋が何故か硬直している今福に聞いた。今福はぎくしゃくと、錆び付いた
からくり人形のような動きで頷きながら、「す、好きです……」と震えた声で云う。
 ふわんと、茶の香りが漂ってきた。そちらに目を向けてみれば、まるでお手本の如く丁寧な所作で備
前が茶を点てている。湯を二度に分けて注ぎ点てているところを見ると、茶道の心得があるのかも知れ
ない。茶道に興味のない庶民は、そこまで丁寧に抹茶を点てないからだ。
 上等な打掛を羽織っているので、上流階級の出かも知れない。学園には農民の子から武家の子まで
様々な家の子がいるから、有り得ない話ではないと庄左ヱ門は思った。
 先に点てられた茶は今福の手に渡り、次に点てられた物が庄左ヱ門の元へ来た。祖父に教わった作
法を思い出しながら一口飲むと、慣れ親しんだ苦味とほのかな甘味がスゥと口の中に広がる。とても素
直に庄左ヱ門が「美味しいです」と告げれば、備前の顔がほころんだ。
「ほっほっ、嬉しい事を云ってくれるのぉ。ところで、黒木君は茶の心得があるようじゃが」
「心得なんて大層な物ではありません。祖父が好んでいるので、少しばかり知っているだけです」
「その年齢で大したものじゃ。どうじゃ、今度私と闘茶(とうちゃ)でもせんか?」
「闘茶……? お茶で闘うんですか?」
「ほ、ほっほっほ! 違う違う、利き茶の事じゃよ。武家や公家で流行っておる遊びでの、此れが中々奥
が深くて面白いのじゃ」
「へぇ……。楽しそうですね。備前先輩はお得意なのですか?」
「うむ。少しばかり自信があるぞ。そうそう、茶を云えばな……」
 備前の茶にまつわる話を、庄左ヱ門は嬉々とした気持ちで拝聴する。庶民も茶を飲むが、楽しむのは
もっぱら上流階級のため、備前のする茶の話はとても貴重な知識だった。
 知らない歴史や伝来、果ては栽培方法まで多岐に渡る話をいつまでも聞いていたかった。しかし、
今日は委員会活動をするために来たのであって、お茶話を聞くために来たのではない。
「あの、備前先輩、お聞きしたい事があるのですが」
「うむ、何でも聞くが良い」
「学級委員長委員会ってどんな活動をするのですか?」
「今しておろう?」
「え?」「え?!」
 流石に驚いて少し素っ頓狂な声を上げてしまった。だが、庄左ヱ門をさらに上回る声を隣りでもそもそ
饅頭を食んでいた今福が出した。その声に自分たちだけでなく、のんびり今福を見ていた――と云う
か、観察していた鉢屋までもが驚いて目を丸くする。
「どうかしたかの、今福君」
「え、いえ、その……い、委員会活動が、これって……?」
 今まで食べていた饅頭と備前の顔を交互に見ながら、今福は混乱しきった様子で云った。
 ふむ、と備前は唇に扇子を当てて、それからニヤリと笑った。
「学級委員長はクラスのまとめ役。先生の雑用係じゃ。つまりは個人活動が基本での、集まって何かを
する、と云う事は基本的に無いのじゃ」
「無いんですか?」
「基本的にはの。完全に無い、とは云えん。例えば、委員会対抗戦になると審判は私らの仕事になるし、
学園長の突然の思い付き行事の司会・進行役もそうじゃの。他には事務員さん方のお手伝いで庭掃除
なんかも仕事の内じゃ。だがの、どれも頻繁にある事じゃないのでな、基本、委員会時間中は暇なんじゃよ」
 そう云って備前は扇子で己を扇ぎながら、ほっほっほと笑った。
 こてんと、庄左ヱ門は首を傾げる。
「それって、皆が働いている時遊んでるって事ですか?」
「そうとも云うの」
「そ、それじゃぁ他の生徒に示しが付きませんよ!」
 今福が声を荒げる。饅頭を食べる手は完全に止まっていた。
「僕ら学級委員長は他の生徒の模範となるべきだと、安藤先生が仰ってました! それなのにそんな
不真面目極まり無い事、僕には出来ません!」
「ほ、ほっほ! 今福君は真面目じゃのぉ。少しくらい茶目っ気を持った方が良いぞ。その方がおなごに
好かれよう」
「ちゃ、茶化さないで下さい! 僕は真面目に……!」
 顔を真っ赤にして立ち上がり今福は怒るが、備前は笑いながらのらりくらりとかわすばかり。どうやら、
小さな子どもの癇癪を見て楽しんでいるらしい。
 悪趣味だと、思う。
「……お鶴さーん。小さい子からかうのもその辺にしないと、黒木が凄い目で睨んでますよ?」
「おや……。黒木君、怒っておるのかの?」
「怒ってはいませんが、真剣に怒る者を見て楽しむのは悪趣味だと思います」
「黒木……」
 今福が、何故か感動したような顔で庄左ヱ門を見る。先ほどは馬鹿にしきった態度だったけれど、
どう云った心境の変化だろうか。
「ほ! ほ、ほほ……。黒木君は正直じゃのぉ。それに物怖じもせん。度胸があるようじゃ」
「そうでしょうか?」
「うむ。最初から今まで、ずっと落ち着いておるじゃろ? そうじゃの……、お主、緊張するとか、
驚くとか、そう云った事は無いのかえ?」
「驚くくらいはしますよ。でも、皆が云う緊張とか、上がるとか……そう云うのはよく分かりません」
「へぇ、その歳で? 将来大物間違い無しじゃん、ねぇお鶴さん」
「ほっほっほ……。そう云う物は、欲しいと思って付く物ではないしの」
「はぁ」
 よく分からないが、感心されている事は分かった。
「さてさて。では、黒木君からこれ以上不興を買わんうちに、真面目に話すとするかのぅ」
「そうして下さい。……今福、座りなよ」
「あ、う、うん……」
 居心地悪そうに今福が座り直すと、備前は一つ咳払いをした。
「先ほどからかうとは云うたがの。嘘は吐(つ)いておらんのじゃ。他の委員会が活動している最中、
私らは暇じゃ。だがの、こうやってのんびりしている事を先生方はご存知じゃよ」
「え?!」「先生方がですか?」
「つまりさ、私らは普段、学級委員長って事でせせこましく働いてるだろ? 他の皆が遊んでる時だって
教材運んだり、ノート運んだり、次の授業の準備手伝ったり、自習になれば監督したりさ。クラスメイトからも
それなりに頼りにされるから、相談受けたりもするし、困ってたら助けに走らないといけないし」
「まぁ、そうですね」
「だからの、今度は逆に、皆が忙しい時には休んでしまおう、と云う訳じゃ」
「そ。いくら学級委員長だからって、ずぅっと働いてたらストレス溜まるし息が詰まるしね。だから、同じ立場の
人間で集まってる時くらい、リラックスしようよ、って事さ」
 だから肩の力抜いて、気楽に行こうよと、鉢屋は笑った。備前も微笑みながら頷いている。
「そうして此処で英気を養って、また頑張れば良いのじゃ」
 庄左ヱ門は今福の方を見た。今福も、庄左ヱ門の方を見ていた。お互い、目を丸くして狐にでも抓まれた
ような顔をしていた。
 一拍、見詰め合って、どちらからともなく肩の力を抜いて、ふっと小さく笑いあった。
 今福の笑みは、何だ、不真面目な訳じゃないんだと、安心してるような物だった。自分の笑みはどんな物
だったのかなと少し考える。
「納得してくれたかのぅ?」
「はい。分かりました」
「僕もです。……その、生意気な事を云って、ごめんなさい」
「ほ、ほっほ……。構わん構わん。私も茶化してしもうたからの。すまんなぁ、こればっかりは性分じゃ。
――どれ、茶が冷めてしもうたの。新しいのを点てようか……」
「あ、待って下さい」
 茶を点てようとする備前を引き止める。まだ何かあったかの、と不思議そうな顔がこちらを見た。
「はい。もう一つお聞きしたいのですが」
「何かの」
「この部屋」
 会議室とは名ばかりの休憩室を軽く見回す。
 床の間の花は綺麗だが、掛け軸は歪んでいる。置物には統一感が無い。ちゃぶ台の上は湯呑みと
菓子類でごっちゃり。畳の上には細かなゴミから大きなゴミまで様々。部屋の四隅には埃。
 そして眼前の先輩の顔には、盛大に餡子が。
 はっきり云って。
「汚いんで掃除していいですか?」
 云って一拍、二拍、三拍後。
 備前と鉢屋が弾けたように笑い出した。備前はごろごろ畳の上に転がって――嗚呼、埃が舞い踊って
いる――、鉢屋は突っ伏しながら掌でばしばし畳を叩く――埃がぶわぶわと舞い上がった。
 今福が顔面蒼白になりながらこちらをがくがく揺さぶって来るが、何なのだろうか。
「先輩? 掃除していいんですか?」
「ほ、ほほ、ほ、ほほほほっ! よ、よいよい! しよう、掃除、久方ぶりにしようではないか、のう
三郎君!」
「あは、あははははは! あははははは! い、いいですねぇ! しましょうか久しぶりに! 今日の
委員会活動は大掃除で決まりっすわ!」
 そう云って一頻り笑ってから、二人はヒーヒー息を荒げつつ目尻の涙を拭った。
 さて、そうと決まれば箒が要るのぉ、俺水汲んで来ます、雑巾も用意せんとなぁぷぷぷ……と会話が続く。
 部屋を出る前、鉢屋がぽんと庄左ヱ門の肩を叩いた。
「君、本当に大物だなぁ」
「はぁ」
 とりあえず掃除は出来るらしい。
 袖を団蔵のようにまくりつつ、何から始めましょうかと云えば、ちゃぶ台の上を頼もうかのぅと微笑まれた。
今福も慌てて立ち上がり、備前に指示を乞うている。
 食べかけのお饅頭や封を切っていない茶菓子袋などを盆の上に集めている庄左ヱ門に、備前が明るく
声をかけてきた。
「お主本に面白いのぉ! 庄ちゃんと呼んでも良いじゃろうか?!」
「構いませんよ」
「決まりじゃ! 私の事はお鶴とでも呼びんしゃい!」
「はい、お鶴先輩。――ところで、顔に餡子が付いてますよ」
「おぉ、いかんいかん……。取れたかの?」
「はい、綺麗になりました」
「よし。では、箒と雑巾を持ってくるでの! 彦ちゃん、座布団は頼んだぞ」
「はい、お鶴先輩!」
 今福が元気良く返事をして、座布団を外へと運んで行く。今日は天気が良いから、取り込む時には
ふかふかになっているだろうなと想像して、庄左ヱ門は小さく笑った。


 こうして、黒木庄左ヱ門の初めての委員会は大掃除になったのだが、とてもとても、楽しいものだった
と云う。



 了


 初めての○○――委員会、学級委員長委員会のバヤイでしたー。最初なので皆苗字で呼んでたりして
ちょっと硬いです。最後の遣り取りを期に、どんどん打ち解けて行きます。
 ちなみに、庄左ヱ門と彦四郎が会議室に入る前の先輩二人の遣り取り。

「ん……誰ぞおるようじゃのう……」
「ぐーぐー」
「……入って来んのぉ」
「ぐーぐー」
「これ、三郎君」
「ぐーぐー」
「三郎君! 起きんかっ!」
「うー……、なんすかお鶴さん……」
「誰ぞ部屋の前におるようじゃ。見てきてくれんかの」
「眠いから厭です」
「おい!」(汗)
「……ぐーぐー」
「……はぁ。やれやれ、仕方ないのぉ……。うぅ、此処で私自らやってしまうのがいかんのかのぉ……」

 三郎、先輩舐めくさりすぎ。(爆)いえ、違います。ちゃんと尊敬してます。後輩の可愛い我が侭ですから!←


 学級委員長委員会がこんな理由でおやつ代計上してたらいいな、ってお話です。


 忍たま1年生に10のお題【配布元:Abandon】





・参考文献(?)敬称略
 時代小説が書きたい! 著:鈴/木/輝/一/郎
 日本食生活史 著:渡/辺/実
 和菓子と日本茶の教科書
 知識ゼロからの日本茶入門 著:山/上/昌/弘
 調/理/師/養/成/教/育/全/書 食/文/化/概/論