※ラピードプレイヤーでラピード大好きの雲麻が、「このシーンではラピードはどう思ってたのかな?」
「犬だから心理的描写が一切出なかったけど……此処ではどう考えてたんだろう?」と想像を巡らせ
た空想妄想の結晶です。
「んな馬鹿な」とか「なんでやねん」と思われるかも知れませんが、「あぁ、こいつの中でラピードはこ
う云うキャラなのか」と軽い気持ちで納得しつつ、軽い気持ちでお読みくださいませ。
 本編前設定は、映画とゲームと妄想のミックス状態です。「え、こんな設定あったっけ?」と思われ
た場合、それは確実に俺設定です。公式無関係である事をご了承ください。

主張:ユーリさんはの凛々の明星のおかん。フレエスが好きだ。だが結局、ユーリとフレンはラピードの嫁!
    ユーリとフレンはナチュラルにラピードと会話出来ると思ってる。←







「もういいよ! ユーリの馬鹿ッ!」
 まるで痴話喧嘩で云い負けたような棄て台詞を――いや、ような、ではない。例えではなく、ありの
まま事実だ。此れは――叩き付けて、フレンは部屋から出て行った。激高していても、扉を丁寧に閉
めていく辺りがフレンらしく、思わず笑ってしまう。
「――ったく、あいつもしつこいよなぁ。帰って来い帰って来いって……俺は元々下町の人間だっての
に」
 棄て台詞を云われた方は、大して堪えた様子もない。部屋の主――と云っても、此処は宿屋の女
将の好意から只同然で借りているのだが――は窓の外を眺めてから、皮肉るような笑みをラピード
へ向けて寄こした。
「行ってやれよ、ラピード。下の道通らないって事は、あいつ、また裏路地かどこかで泣いてんだろう
からな」
 泣かせた当人の台詞ではないし、追いかけると云うならばそれこそ彼自身が行くべきだと思うのだ
が、この柔軟なふりした意地っ張りには無理な話だろう。
 ラピードはため息を一つつくと、いつも通り尻尾でドアノブを捻り薄く空けてから、頭で扉を押して外
に出た。完全に外に出る前に窓辺に立つユーリを横目で見やり、一声掛ける。
 ――行って来る。
「おう。ま、気をつけてな」
 こちらに背を向けたまま、ユーリが片手をひらひらと振る。手と一緒に、長い黒髪がふわりと風を孕
んで揺れた。相変わらず後ろから見ると人間の雌に見える。正面から見ても雌に見えるのだから、ま
ぁ当たり前かも知れないが。
 ユーリからは見えないだろうが、ラピードは応えるように尻尾を一度振って部屋から出た。頭で閉め
るのは面倒なので、後ろ脚で蹴るようにして閉める。
 その姿を外の階段をよちよちと登って来た宿屋の娘に、運悪く見られてしまった。
「あっ、らぴーど! あしでしめちゃだめなのよ! めっ!」
 ――すまん、次から気を付けよう。
 謝るついでに頬を舐めれば、娘はすぐに笑顔になってラピードの頭を小さな手でよしよしと撫でてき
た。子供扱いされているのが少々気に喰わないが、まぁ幼子のやる事かとラピードは大人しくその手
を受け入れる。頭を撫でられるのは嫌いではない。
 どうやらユーリに用事があったらしく、頭を撫でる時間は普段より短かった。ラピードに「またね」と
云って、娘は今ラピードが出て来た部屋の方へと向かう。
 また重い荷物でも運ばされるのだろう相方に少し同情しつつも、只同然で部屋を借りているのだか
らこの程度の労働は当たり前かと思い直し、ラピードは改めてフレンの元へと向かった。


 *** ***


 やはりと云うか、案の定と云うか。
 宿近くの裏道にフレンは居た。タルの陰に隠れるようにしゃがみ込み、膝まで抱えていた。小さく
だが鼻を啜る音もする。
 そんな恰好で泣くような年齢でもあるまいし、仕方のない奴だと今一度溜め息をついて、ラピード
は音もなく歩み寄った。フレンの隣、僅かに空いた隙間に体を滑りこませる。ぴくりと、フレンの体
が揺れた。
 ――ユーリじゃなくて済まんな。
「……いいよ。あいつは来ないって分かってるから」
 上げられた顔を見て、つい笑いそうになってしまった。頬が真っ赤だ。まるで子供のような泣き顔
ではないか。帰る時に困るだろうにと、ラピードはつい頬を舐めてしまった。舐めた程度で赤い色は
消えない。ただ、塩っ辛さを感じてしまうだけだ。
「……」
 フレンは一度鼻を啜った。紙の一枚でも差し出してやれればよいのだが、生憎と持ち合わせがな
い。
「……本当は分かってるんだ。僕の我が侭だって」
 ――騎士団に戻って来いと云う話か?
「うん……」
 手の甲で強引に目元を擦るものだから、袖を引いて止めてやる。あまり擦ると時間が経っても赤
い後が消え無くなってしまう。それは彼の役職的にも困るだろう。
 泣き晴らした顔の騎士など、様にならないにも程がある。
「ユーリには、組織って合わないと思うんだ。束縛や強制を嫌う奴だし……僕も、ユーリには自由の
方が合ってるって分かってる。でも、……でも僕は……」
 ぽろぽろと、また涙を流し始めてしまった。泣き止ませたいのに、どうにも上手く行かないものだ。
 くしゃりと、フレンの顔が歪んだ。
「僕は、ユーリと一緒に居たいよ……ッ」
 切実な言葉を、まるで血を吐くような声音で云う。その言葉を聞く度に、ラピードは申し訳ない気持
ちになるのだ。
 勿論、フレンはラピードを責めている訳ではないし、そんな意図もない。だが、ユーリが騎士団に
寄りつかなくなった原因の一部にラピードの存在がある事も事実だ。
 ラピードが居なければ、あるいはラピードから勧めれば、ユーリが騎士団に戻る可能性もある。だ
がラピードは――
「ごめんよ、ラピード。またお前に弱音を云ってしまったね」
 ようやく泣きやんだフレンが淡い笑みを浮かべて云う。暗い方向へ行きかけた思考がフレンへと引
き戻された事に、内心で安堵した。
 ――……気にするな。俺でよければいくらでも聞いてやる。
 それを悟られないように言葉を返せば、穏やかな笑みと共に「ありがとう」と云われてしまった。
 礼を云われるような立場に、ラピードはいない。本来ならラピードは罵られても仕方がない、いや、
罵られるべき位置にいるのだ。
「……実はね、僕、小隊長に昇格するんだ」
 ――!
 素直に驚いた。騎士団と云う場所は実力より血筋と云う、ラピードからすれば至極下らない物が優
先される。戦う事を目的とする集団であるならば、実力主義に基づいてもいいように思うのだが、ど
うもこの国の人間達は血筋と云う体内に流れる液体にこだわるのだ。
 血に良いも悪いもない。皆(みな)赤く、流れれば痛い、失えば死ぬ。
 特別な血だとか云うならば、いっそ青色にでもなってみろと云ってやりたいものだ。
 ――……凄いじゃないか。出世頭だな、フレン。
 するりと称賛が零れた。あんな場所で――幼い頃の記憶だから大分曖昧だが、それでも厭な記憶
はやけに鮮明に残っている――平民の上若いフレンが小隊とは云え隊長に任命されるとは。
 噂に聞くアレクセイとやらが実力重視と云うのは事実だったようだ。
「だから、今戻ってくれたら、僕の……――」
 言葉が途切れる。続きは恐らく、「僕の隊に入れて貰えるかも知れない」とか、そう云う類の事だろ
う。
 正直、それはどうだろうと云う気がしないでもないが、敢えて否定する必要もない。そうか、と随分
と適当な相槌を打った。
「……」
 もう一度涙を拭って、フレンは立ち上がった。
「……ありがとラピード。もう帰るよ」
 ――そうか。懲りずにまた来い。
「はは……。うん、また休み貰って来るよ。次来る時はラピードの好きなハンバーグ作ってくるから」
 ――……あぁ。
 正直、玉ねぎ入りの食べ物は苦手で、さらに云うならフレンの料理はとても美味しいか死ぬほど不
味いか究極の二択なので遠慮したい所だが。
 純粋に、ラピードの好物が肉だからハンバーグも好きだろうと思い、尚且つ好意で作ると云ってく
れるフレンに「いらない」とは云えなかった。またユーリに文句を云われてしまうが、まぁあいつもフレ
ンを泣かせたのだから詫びの代わりに食べればよいとラピードは思った。
 ひらりと手を振って帰って行くフレンを、尻尾を振って見送る。こちらへ向けられた背中が寂しげで
あったのは、見間違いでも思い込みでもないだろう。
 フレンは寂しいのだ。騎士団にたった一人で残されて。
 同期の友は居るだろう。小隊長になると云う事は、信頼出来る相手も居ると思う。尊敬する相手も、
敬愛する相手もいるそうだ。
 でも、騎士団にユーリはいないのだ。
 ユーリの代わりは誰にも出来ない。誰もユーリのようにフレンを支える事など出来ない。フレンの
隣に立ちたいと望む者が現れた所で、その場所はユーリにしか許さない。
 我が侭だと、排他的だと罵る事は簡単だった。けれど、ラピードはその頑なさすら愛しく思い、同
時に哀しくもなる。
 フレンからユーリを取り上げたのは自分で、現在に至るまで一人占めにし続けているのも、またラ
ピードだったからだ。
 二人ともそのように思ってはいないだろう。少しも、意識の端にも乗せはしないだろう。けれどラピー
ドは知っているし、分かっている。
 悪いのは自分だ。この立場に甘んじて、満足している自分が悪いのだと。
 けれど、それでも――
 ユーリの隣は自分の物だと、フレンにとてくれてやるものかと、そう強く思う己から、ラピードは目
を逸らす事が出来なかった。
 人より短いこの寿命が尽きるまでは、ユーリを一人占めしていたかった。
 自分が悪いと分かっているのに、誰からも責められないと云うのは少々辛い。いっそ詰られた方
が気持ちは軽くなる。だが、二人に向かってラピードを責めろとは云えないし、云った所で二人揃っ
て「何で?」と首を傾げるに決まっているのだ。
 そんな馬鹿な二人が愛しくて、いじましくて、ラピードは今日も、犬に似合わぬ溜め息をつくのだっ
た。



 − 例え明日世界が終わっても、手放せない愛がある。



 了


 突っ込み待ちなような、突っ込まないで欲しいような、微妙な心境です。
 そもそも新年初更新がこれでいいのかって云う。全裸待機していただいてるシリーズの続き書けよ
と自分でも思うのですが、ヴェスペへの滾りが酷いので形にせずには居られませんでした。多分これ
も続きます。← 
 連載抱えすぎですね本当に。でもかきたい時にかきたい物を心行くまでかくのがモットーです。←


 2011/01/06