注意。
 このお話は、痛々しいアルフレッド×フェリシアーノです。
 生々しくはありませんが、性描写あります。
 18禁です。
 痛い・エロが嫌いな方、苦手な方は閲覧をお控えくださいますよう、お願い致します。
 小説を読んだ後の中傷・苦情は受け付けない方針でございます。


 自己責任でご覧下さいませ。














 可哀想な子なのだと、思う事にした。

「ヒッ…あ、ぁ…あ゛…ッ!」
 スプリングが軋む音にあわせて、声が出る。
 嬌声と云うには硬く、悲鳴と云うには甘ったるい、中途半端な声だった。
 この行為に没頭できればいくらでも甘ったるい嬌声が上がっただろうし、心の底から拒否していれ
ば苦痛の悲鳴が迸っただろう。けれど気持ちが中途半端なせいか、出る声まで中途半端だった。
 こちらの声になど興味がないのか――性欲を満たすのに必死なんだろう。若いから――、ただが
むしゃらに腰が動かされる。黙れとも云われなければ、もっと声を出せとも云われない。
 ただ一つ。
 抵抗するなとは云われていた。



 − 友情を選んだだけ。



 特に親しい相手ではなかった。
 相手は世界一の超大国。自分は文化遺産と料理が自慢の観光地。
 共通点は特に無く、自分は怖い物が嫌いだから率先して近づく事はしていなかった。と云うより、単
純にあまり好きではなかったから避けていた。嫌い、とまでは思っていなかった。そこまで彼を知って
いる訳ではなかったから。
「ヴァルガスは、菊の事好きかい?」
 だから突然、そんな事を聞かれて驚いた。質問の内容自体は驚くものではなかったけれど、彼が口
にした事が驚きだった。
 誰が誰を好きだろうと気にする人ではなかったから。
「うん、大好きだよー。優しいし、ご飯美味しいし、文化は面白いし…」
 驚いたけど、聞かれたならば答えなければ失礼だと思って慌てて答えた。
 菊の事は大好きだ。大事な友達。
 とってもお人好し。甘やかしてくれる優しい友人。
 だから素直に答えた。大好きだと。
 その答えにうんうんと笑顔で頷いてから、彼は表情を変えずに云った。
「じゃぁルートヴィッヒは? 彼も好き?」
 直ぐに頷いた。
「うん! 大好き!」
 大好き。本当の気持ち。ただ、菊に対する「大好き」とはちょっとだけ違う。
 友達以上になりたい、大好き。
 でも上手く云えなくて、知り合ってから「良い友達」止まり。いい雰囲気になったかなって思うと、
ローデリヒさんやギルや菊が来て駄目になる。
 筋肉ムキムキであったかくて、役に立たなくても守ってくれた。大好きな人。
 初恋の子に雰囲気が似てるのは、自分だけの秘密。
 大声で大好きって答えてから、首を傾げる。
「どうしてそんな事聞くの?」
 逆に聞き返せば、また表情を変えずに彼は云った。
「場所、変えようか」
 廊下で立ち話じゃいけないのだろうか。でも彼はそう云ってスタスタと歩き出してしまった。付い
ていかない訳にもいかなくて、慌てて後を追った。
 使われてない小会議室に案内される。ホワイトボードはまっさら。円卓と椅子。カーテンは閉まっ
てて、全体的に薄暗い。
 促されて先に入った。きょろりと室内に目をめぐらせた時、背後で扉の閉まる音と、ガチャリと鍵
が閉まる音がして慌ててふり返った。
 途端、顔を殴られた。
 簡単に吹っ飛んだ体は円卓にぶつかって、ずるりと床に落ちる。何が起きたのか判らず、痛みさ
え遠かった。
 鼻血は出たけど歯は折れていなかったから、手加減はされていたのだと思う。
 頭の上から声が落ちてくる。
「ムカつくんだよね、君」
 酷く冷たい声だった。普段、菊やアーサー相手に出している声とは全然違う、氷みたいな声。
 のろのろと手が上がって殴られた頬を押さえる。恐る恐る顔を上げれば、笑みを消した冷酷な顔
がこちらを見下ろしていた。
 足が動く。あ、と思った時には、横腹を蹴り上げられてしこたま咳き込んだ。胃袋を蹴られた訳で
はなかったので吐きはしなかったけど、酷い痛みに眩暈がした。
 考える。
 何故自分は、いきなりこんな、理不尽な暴力を受けているのか。わからない。彼の癇に障るよう
な言動を、自分はしただろうか。していない、はずだ。質問を受けて、正直に返しただけ。しかも示
したのは好意だ。敵意や悪意を示したならばまだわかるとして、好意を示して暴力を振るわれるだ
なんて意味がわからない。
「大事にされて当然ってヘラヘラして。守られてばっかりでさ」
 大事に、されている自覚はあった。ルートはなんやかやと世話を焼いてくれるし、菊は甘やかし
てくれた。周りの国々からも、なんだかんだ、可愛がってもらっていた。
「――ねぇ」
「ヒッ……」
 突然しゃがみこんだ彼に、真正面から顔を覗きこまれ声をかけられる。
 加えられた二つの暴力にすっかり萎縮してしまっていて、咽喉から情けない声が出た。
「菊とルートヴィッヒの事、スキって云ったよね? スキって事は、大事って事だね?」
 問われ、コクリと頷く。その通りだったから、素直に頷いた。
 にこりと、優しい笑みが浮かべられた。思わず笑みを返そうとしたけれど、その前に囁かれた言葉
に硬直する。
「俺が二人を傷つけたら、どうする?」
 音を立てて、頭から血の気が引いた気がした。
 国としてであっても、個人であっても、彼に傷つけられたら――
 あの二人が傷つけられる。想像しただけで、恐怖に震えた。
 駄目だ。そんな事。二人とも立ち直って、楽しそうに笑って過ごしてるのに。
 それを蹂躙されるなんて、赦せない。でも、自分に、彼を止める力もない。
「やめ、……やめ、て……」
 出来たのは、小さな声の制止。何の効力も無いはずのそれは、彼の笑みを買った。
「やめて? やめてって事は、嫌だって事だね? 二人を傷つけられたくないって事だね?」
 当たり前の事を繰り返し聞かれる。必死にコクコクと頷けば、彼は、
「じゃぁ、守ってみせてよ、―――君が」
 愉悦の笑みを浮かべて、云った。

 *** ***

 初めての時は散々な目にあったと、思い出す。
 脅されて、力ずくで押さえ込まれて、恐怖のあまり抵抗もせず無条件降伏したと云うのに散々殴ら
れた。服の上から見えない場所を、余すところ無く。
 無理矢理犯されたせいで流血沙汰になり、大変だった事も思い出す。拭っても拭っても延々と血
が出てきて、血まみれになったハンカチを手に半分恐慌状態に陥ったりもした。
 彼は後始末すらしてくれなかった。
 直腸に自分で指を入れて掻き出した時の絶望感は、忘れたくとも忘れられない。
 救いだったのは、ネコ役が初めてではなかった事だろうか。ルートと菊相手に経験があった。
 最も二人は丁寧に慣らしてくれたし、プレイの一環で酷い事をする時もあったけど、終われば優し
くしてくれたし、後始末までしてくれたけれど。
 その出来事の直後、一週間くらい寝込んでしまった。
 発熱して、毎日吐いて、悪夢を見て魘されて。あの、普段は「バカ弟」「うるせー」「コノヤロー」くら
いしか云わない兄が血相を変え、泣きながら自身の兄貴分に電話をするくらいには酷かった。
 どう云う経緯で伝わったかは想像するしかないが、菊やルートだけでなく周り中から見舞いが来た
事には閉口したなと、内心で苦笑いする。
 普段は厳しいバッシュでさえ、「早く元気になれ。お前が来ないと調子が狂うのである」なんて云っ
てチーズを持って来てくれたくらいだ。あの時の自分は本当に酷い顔をしていたのだ、安易に想像が
付いた。
 他人の心の機微に鋭い菊が「何があったんです」と優しく聞いてきた時には、洗いざらい全てぶち
まけてしまいたくなった。「君の同盟国に散々殴られて強姦されました」なんて、口が裂けても云えは
しなかったけれど。
 だってもし云ってしまったら、彼の矛先は間違いなくルートと菊に向かうってわかってたから。
「……考え事かい?」
 こちらの体など一切考慮せず、好き勝手に揺さぶっていた人が、突然動きを止めて咎めるように云っ
た。
「……初めての、思い出してただけ……」
 軽く息を整えてから紡いだ言葉に、あぁと合点が行ったような顔をする。
「初めての時は酷かったね! 入れようとしても中々入らなくて無理矢理押し込んだら裂けて血が出
ちゃってさ! お陰で楽にはなったけど、終わってからペ■ス拭いたらハンカチ血まみれになって軽
く鬱になったなぁ…。あ、そう云えば君、あの後大丈夫だったの? 面倒臭いから放って帰っちゃっ
たけど」
「……大丈夫じゃ、なかったら、今、此処にいないよ」
「それもそうだね」
 罪悪感を欠片も感じてない声で云われ、気分が沈む。酷い子だと改めて思った。
 抱かれる度に思うのだが、この子は、どこか欠落している。優しさはあると思う。労わりや、慈愛
も。菊とアーサーたち相手にはそう云う感情を出す時があったから。
 上司の決定で落としたアレで、菊が死ぬ寸前までズタボロになった時、泣きながら謝っていたし。
甲斐甲斐しく看病していた事も、知ってる。アーサーにだって酷い事云ったりスラングの飛ばしあい
したりするけど、自分とフランシス以外の奴にアーサーを貶されようものなら、内心物凄く怒って裏で
嫌がらせしたり。
 そもそも彼が二度目に参加したのは、ルートがアーサーをボコったのが遠因だって云うし。
 懐いた相手と身内には、優しい。でも、それ以外には、酷い。
 だから友達できないんだよ、とは云ってあげないけど。
 ギシリと、大きくベッドが軋む。顔を覗きこまれたせいで、中に入っているモノの角度が変わって息
を飲んだ。
「君ってさ、抵抗しないけど」
 青い瞳の奥――瞳孔が狭まる。狭くなっただけで細くなったわけではないのに、何故か爬虫類の
目だと思った。
 獲物を見据える、捕食動物の目。
「――……そんなに、菊とルートヴィッヒが、大事?」
 脊髄反射で、頷く。
 大事な、大事な、――大事な、友達。かけがえない、友人。
 痛いのは嫌い、戦うのは怖い、敵前逃亡なんて当たり前だった自分が、彼らだけは裏切りたくなく
て、兄に逆らってまで一緒に居た。
 最後の最後まで、一緒に戦った友達。
 終わった後、二人は敗戦国、自分は戦勝国として扱われている事が、今でも悔しい。二人は気に
するなって笑っていたけれど、紙切れのような自分のプライドは酷く痛んだ。
 二人と一緒なら、敗者扱いでも良かったのに。
「ふぅん……」
 興味なさそうな声が落ちてくる。
 そっちから聞いたくせに、と文句の一つも云いたくなるくらい、そっけない声。だと云うのに、再開
された動きは強く激しく、咽喉から悲鳴が迸った。
 太ももを掴む手の力は、肉を引き千切るつもりなのかと疑うくらい強い。激しく繰り返される出入に、
接合部が引き攣れたように痛い。痛い、痛い、と叫んで、でも、「やめて」とだけは云わない。
 反抗も、抵抗も、赦されていないから。
「本当に君って――」
 自分自身の悲鳴の合間に聞こえてくる、冷え切った声。
「ムカつくね」
 涙で歪んだ視界に、歪んだ笑顔。
 嗚呼、この子には。
 心許せる友達がいないのか。
 形振り構わず、損得勘定も抜きにして力になりたいと思える相手がいないのか。
 そして彼に対して――無償の好意を向けてくれる相手もいないのかと、知る。
 だから彼は、自分を手酷く扱うのだろうか。
(君は――)
 瞼を下ろせば世界は黒く。
 でも耳に入り込む音と激しい痛みに、現実は消えてない事を思い知らされ。
(可哀想だね―――アルフレッド)
 新しく流れた涙は痛みを訴えるためのものか、それとも、可哀想な子供のためなのか。
 フェリシアーノ自身にも、わからなかった。


                                   ――― 雁字搦めの脅迫



 了


 アルフェリ第一弾。
 絶対恋愛感情に発展しなさそうな始まりと云うのが、ワタクシの萌えシチュの一つであります。
 これからも酷い目に合うと思うけど(主にパラレルで)、強く生きてフェリシアーノ!←


『理不尽な愛5題』お題配布元様『All I Have to Give


 加筆修正 09/05/27