※静雄の恋愛遍歴捏造してます☆←
伸びて来た手が、急に恐ろしく思えた。
咄嗟に払おうとして――自分が払ったりなどしたら、軽くでも捻挫か打撲は間違いないと気付いた。
だから、その手を受け入れるしかなく、それがまた恐ろしかった。
こんな弱い子供、ちょっと突いただけで死んでしまいそうだ。
どこもかしこも細くて薄い。華奢と云う単語がよく似合う。体重とて静雄より二十は軽いだろう、そ
んな子供だ。
だからなのか、触れられる事が怖かった。
この華奢な手を、腕を、体を、静雄の人間離れした筋力が破壊してしまうのではないかと思うと、
怖くて仕方が無くなったのだ。
小さな手が、ぺたりと額に当てられた。温かいと思い込んでいた手は予想外に冷たく、ひんやりと
していた。まるで人形のような、無機質な冷たさだ。
「熱は無いみたいですね……」
ぽつりと呟かれる。
会話中にぼんやりし始めたり、唐突に咳き込んだりした静雄の奇行を怪訝に思わず、体調の心配
をしてくれるあたり、この子供は相当のお人好しだろう。
先程からさらしている醜態は、風邪のせいではない。
率直に云えば、静雄は自分より年下の、しかも未成年の同性相手に恋をしてしまっている。いつの
間にやら始まっていたこの恋を、静雄は持て余し気味だ。
初恋は年上のパン屋のお姉さんだった。次の恋は一つ上の先輩だった。その次は高校時代、通学
路でよくすれ違った女子大生だった。
数少ない恋した経験は皆年上の異性。年下の同性に恋した事など此れが初めてのためか、どうに
も勝手が分からない。困惑するばかりだ。
前は、自分のような人間でも好いた相手を笑顔にさせられるのだと知る事が出来て、それだけで満
足出来てしまった。だが、あれ以来頻繁に会うようになり、あの笑顔を見れるのが当たり前になって
来ると、今度は触れたいと思うようになった。
人間の欲望は尽きる事を知らない、とは本当の事だったらしい。
話せるだけで、笑顔を見れるだけで満足だったはずなのに、今は触れたいと思っている。
この手で、破壊ばかり齎す手で、触れたいなどと。
――何とも大それた望みではないか。
せめて撫でるだけでも。そう考えた時もあった。だが、撫でている最中につい力が入ってしまったら、
緊張のあまり力加減が出来なくなってしまったら――そう考えると、腕すら上がらなくなってしまった。
この前までは、指一本程度は触れる事が出来たと云うのに。
自分の情けなさに反吐が出そうになった時、するりと、冷たい手が静雄の手に触れて来た。
「顔色が悪いですよ。あっちのベンチで休みましょう?」
気遣う言葉と共に、優しく手を引かれた。
厭ではない。間違いなく、嬉しかった。
しかし、手を繋ぐと云う恋人のような行為に、一瞬で頭に血が昇ってしまう。
驚きと緊張のあまり、握られた手に力がこもりかけた。それを慌てて自制し、ついでに手も放そう
としたのだけれど、自ら払う事も出来ないのに解放など叶う訳がなく。また、口も緊張のあまり乾い
て役に立た無い。
純情な女学生が、憧れの男子生徒に手を引かれるかの如く。ただ無抵抗に、されるがままになる
しかなかった。
大の男が情けなくも見っとも無い。同窓の連中に見られたら、指を指されながら抱腹絶倒されるに
違いないだろう。
それでも静雄は何もする事が出来ず、ただ、真っ赤に染め上がっているだろう顔を隠すために俯
き、導かれるまま歩くしかなかった。
− おかしくなるから触るな!
そう云えたら、まだ、勇ましかったと思う。
(何も出来ない己の、なんと惨めで情けない事か!)(しかし、それも良いと、確かに思う)
了
続編を待ってた方が居るって私、信じてる……!←
どんどん静雄さんが乙女になって行く。あれ、どう云う事だ……? いや、元から乙女だっけ……?(とんだ濡れ衣)
前作の不穏さはどっかに行きました。(えー)
あ、ちゃんと回収します回収します。多分。←
そろそろうざいあの人の出番、か……?
執筆 2010/01/10
お題配付元様「嗚呼-argh」
